第3話 The Mark of Z ~Zの刻印~
怪傑ゾロの想区に戻ってきた一行は近くにあった町を拠点にしてカオステラーの手がかりを探していた。想区にたどり着いてからしばらくたったある日の事だった。
「また次元の裂け目が見つかったって?」
「うん。やっぱりヴィラン達が守ってる。この前のとはまた違う物みたい」
シェインからの報告をエクスたちが聞く。
「何かあるかもしれないわ。シェイン、道案内出来るかしら?」
「任せて」
今日の調査場所は決まった。一行はシェインに先導されて次元の裂け目まで行くことになった。
シェインに案内されること、30分。特に問題なく目的地にたどり着いた。ただしたどり着いたその場所で、ちょっとした問題、というか謎があった。
「……何でヴィランがいないんだ?」
シェインの報告と違って周りにはヴィランの影も形も無い。
「もしかして罠か……?」
タオは罠かもしれないと疑う。もしかしたらシェインが来たのを知っていてわざと誘い込んでいるのかもしれないと思ったのだ。
「……行ってみましょう」
レイナがぽつりと言いだす。
「!! お嬢! 俺の話聞いてんのか!?」
「ええ。分かってる。でも私たちが持ってる情報は少なすぎる。たとえ罠だったとしても行ってみる価値はあると思うわ。行きましょう」
「はぁ……お嬢は言い出すと聞かねえからなぁ。分かった。行くよ」
レイナを先頭に一行は次元の裂け目の中へと入っていった。
次元の裂け目を通り抜け、たどり着いた先は立派な建物の路地裏。そこを抜けると大きな城下町へとつながっていた。そこから見える城は、皆見覚えのある物だった。
「あれはシンデレラ城!? ってことはここは……シンデレラの想区!? しかも僕の家の近くだ! でも、何か違う気がする……」
そこはエクスの故郷であるシンデレラの想区……のはずだがどこか雰囲気が違う場所。エクスが近くにあった自分の家を訪ねると母親とは違う女の人が出た。
「あら旅人さん、何か用?」
「旅人さん……? あ、いや……家を間違えました。失礼します」
エクスは静かに玄関のドアを閉めた。
「何で母さんがいないんだ!?」
「多分ここはシンデレラの想区だけどエクスの故郷ではないと思うわ。同じような想区はいくつかあって同じようなお話が繰り返されてるわ」
「へぇ。そうなんだ。でも懐かしいなあ。故郷に帰って来たみたいだ」
エクスは久しぶりとなるシンデレラの想区で懐かしい思いに浸る。そんな中、人ごみの中でエクスと男の肩がぶつかる。
「おっと失礼」
男は昼間だというのに黒いマスクをつけていた。
「おやおや、再び出会えましたね」
怪傑ゾロ、その人だった。
「ゾロさん! こんなところで何をやってるんですか? ここはあなたの想区ではありませんよ?」
「ああ。何せ私は正義の味方、身体がいくつあっても足りない位忙しい身であります。今日も今日とて悪党を成敗したところであります」
「……想区の外の人間は原則として干渉してはいけないんだけど分かってるの?」
シェインが低いトーンでゆさぶりをかけるように言う。
「もちろん、存じておりますよ。その上での悪党退治でございます。では失礼させていただきます」
そう言って男は、ゾロは去っていった。
「……怪しい」
シェインが去っていく男をにらみつける。
「本来自分の想区の外には出て行くことは無いはず。ましてや物語上重要な登場人物たちはなおさら外には出ないはず……もしかして!」
レイナが何かに気づいた、その時
「キャアアアアアアア!!」
少女の悲鳴が響く。
「この声は……シンデレラ!」
エクスは一も二も無く飛びだした!
「あ、オイ待てエクス!」
エクスは我先にと悲鳴の聞こえた方向へ猛然と駆ける!
「シンデレラ! 大丈夫か!?」
息を切らしながらエクスがシンデレラに駆け寄る。部屋の中には10体近い数のヴィランが陣取っていた。
「あなたは誰!?」
「いいから君は下がるんだ! ここは僕に任せて!」
エクスはヒーローの姿に変身し、一人戦いを始める。幸いヴィランは全員今まで数えきれない位倒してきた弱い雑魚であり、ろくに統率も取れていないただの群れだった。
守るべき者がいるエクスは敵を切り裂く刃となり、ヴィランに襲い掛かる! 一太刀で胴を斬り、返す刃で首を
それをヴィランが反応出来ない程の素早さで動き回りながら放ってくるためもはや彼らに抗うすべはない。一匹、また一匹と倒れていき、タオたちが駆けつける頃にはすでに全滅させた後だった。
「シンデレラ、もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとう……それよりお継母さまとお義姉様が!」
奥の部屋でシンデレラの継母と義理の姉が血だまりの中に倒れていた。
「レイナ! 治療を頼む! シェインは人を呼んできてくれ!」
エクスにせかされるように二人は動き出す。
「まずいわ! 二人とも脈が無い!」
レイナは半ば絶望的な状況に戸惑いながらも治療を始める。エクスはただ怯えるだけのシンデレラの手をそっと握り、やさしく声をかける。
「大丈夫、大丈夫だから。僕たちが必ず助けるから、心配しないで」
エクスは澄んだ瞳で怯えたシンデレラの瞳をじっと見つめる。少しは効果があったようで彼女は徐々に落ち着いていった。やがて人も集まり、シンデレラの継母と義姉は無事に病院へと搬送されていった。
そんなひと騒動が静まった後の事だった。
「みんな……これを見てくれ」
タオが何かに気付いた。彼が指差した先には木の床に何か鋭利な刃物で「Z」の文字が刻まれていた。
「Zのマーク……まさか怪傑ゾロ!?」
「もしかして……怪傑ゾロがカオステラーって事!?」
「そういう事になるわね。今すぐドン・ディエゴの屋敷に行きましょう!」
一行は
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