37 建国記念の日・初午

【建国記念の日】


「今日は建国記念の日だな」

「あい。でも土曜日ですから、ちょっと損した気分でございますね」

 五月家にはあんまり関係ないと……。

 毎日日曜日みたいなもんですから。


「建国をしのび、国を愛する心を養う日だ」

「あい」

「今の我が国は愛するに値するのだろうか……」

「あい……」

 経済も政治もちょっと混乱気味ですからね。


「活字で意識を変えられるだろうか……」

「あい」

「そうか。なら書く!」

「あい!」

 五月先生、一念発起です。


「じゃあ、ネタくれっ」

「あい?」


 ジーッ……。

 五月先生、資料整理をしているヒロシを見つめます。

「先生、何か用っすか?』

「いや別に……」

 一瞬目をそらしますが、また見つめます。


「ずっと見られてるとやりづらいんっすけど……」

「ヒロシくん」

「はい」

「ネタくれっ」

「はい?」

 五月先生、ダメじゃん。




【初午】


「五月様、お夕飯できましたです」

「ん。って、つい最近太巻き食べたよな」

 節分に恵方巻き食べました。


「で、今日がいなり寿司……」

「あい。今日は初午ですから」

「初午にはいなり寿司食べるんだ」


 そのようですね。

「もともとは旧暦の二月、春の行事で、豊作祈願だったようですよ」

「へー」

「その後、農業の神様が降臨された稲荷社を祀るようになったそうです」

 メイドさん、調べたんでしょうね。


「ふーん」

 ヒロシくん、空腹で待ちきれないご様子。

 とりあえず相槌だけは打ちました。


「地域によっては、子供たちが旗飴をもらったり、火の用心の習慣もあるようですよ」

「東京では何があるんだ?」

「さぁ、お参り行って、おいなりさん食べるくらいでしょうか……」


 ガブッ……。

 ヒロシくん、我慢できなくて食べだしました。

「あ〜んヒロシ、いただきますしなさい!」

「節分と、その初午とやらで助六寿司だな」

 ヒロシくん、それは歌舞伎。

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