23 お隣の犬・ジングルベル

【お隣の犬】


 キュ〜ン、キュ〜ン……。

 キャンキャン、キュ〜ン……。

 どこかで犬が鳴いています。


「ずいぶん近くで犬の鳴き声がするな」

「五月様、お隣さんがワンコ飼い始めたのですよ」

「そうか」

 五月家の周りでは、小型犬を飼っているお宅が結構あります。


「とっても可愛いチワワちゃんですよ」

「ふーん」

「女の子だそうです」


 キュ〜ン、キュ〜ン……。

 また鳴いています。

 甘えんぼちゃんのようですね。


「うちでも飼おうか」

「お世話が大変でございますよ」

 そうそう、ブラッシングや予防接種、お散歩とかう◯ちのマナーとか。


「んーそれはそうなんだが……湯たんぽ代わりに……」

「そんなことおっしゃると、いろんなとこから叱られますよ!」

「はい、すみません……」

 冬はお布団共有です。




【ジングルベル】


「ジングルベ〜ル、ジングルベ〜ル、ジングル踊れぇ〜♪」

 メイドさん、クリスマスが近づいてきて浮かれています。

 リズムに合わせてお掃除です。


「ねぇメイド?」

「あい?」

 五月先生、怪訝な様子でメイドさんに声をかけます。


「前から思ってたんだけど……」

「なんでございましょう?」

「ジングルベルの続きは、鈴がー鳴るーじゃないか?」

 確かに。


「そうなのですか? 小さい頃からわたくしはずっとこれで歌ってました」

「今もちっちゃいけどな」

「今それ関係ないでございましょ?」


「おそらく英語のjingle all the wayだな」

「踊れに聞こえます……」

 聞こえません。


「クリスマスに踊ってどうする」

「それもそうですねぇ」 

 メイドさん、英語は苦手ですから。

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