22 クリスマスツリー・落ち葉

【クリスマスツリー】


「ジングルベ〜ル、ジングルベ〜ル、ふんふんふん、ふふ〜ん♪」

 メイドさん、鼻歌しながらクリスマスの準備です。


「五月様、お飾りしないのですか?」

「うん?」

 五月先生ペンを持ち、なにやら書き物です。


「4ヶ月も前から、ご自分で予約したツリーですよ」

「んー、今短冊にお願い事書いてる」

 あ、執筆ではなかったのですね。


「それは7月7日に終わりましたけど……」

「んー、あの時は書かなかったから」

「なんて書くのですか?」

「ほれ、書けたの吊るしていって」

〈来年はファンレターが来ますように〉


「ほい、次」

〈応援のお手紙が来ますように〉

 言いたいこと同じです。


「次」

「いったい何枚お書きになるのですか?」

「うーんと、十枚くらい?」

 全部同じ内容で?


「来るといいでございすね……」

「うん……」

 五月家のクリスマスツリーは一味違います。




【落ち葉】


 カサカサ、カサカサ……。

 カサカサ、カサカサ……。

 五月家の木々はすっかりハゲ坊主です。

 五月先生とメイドさん、熊手でお庭の落ち葉をかき集めています。


「五月様、落ち葉がこんなにたくさん」

「昔はよくこれでたき火して、焼き芋作ったな」

「そうでございますね。だけど、住宅事情で今は無理でございます」

 煙やにおいでご近所迷惑です。


「焼き芋したいなぁ〜」

 五月先生、叫びながらお台所へ。


 カシャカシャ、カシャカシャ……。

 なにやら持って、すぐに戻ってきました。


「ご、五月様、つ、通報されます。お、おやめくださいませ!」

「えぇ〜、つまんないのぉ〜」

 アルミ箔に包んださつまいもです。


「どうしてもやりたければ、わたくしの実家へ行きましょう」

「焼き芋のために電車賃使うのもなぁ……」

「ええ、まあ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る