21 クリスマスパーティー・ボロ市

【クリスマスパーティー】


「じゃあメイド、行ってくる」

 五月先生、お出かけです。


「今夜はご友人とクリスマスパーティーでしたね」

「ホテルでバイキング食べてくる」

 いいですね、クリパ。

 メイドさん、珍しく小言もなくお見送りです。


「ローストチキンやローストビーフ、お寿司もありますよね」

「うむ、あるだろうな」

「パエリヤにドリア、カニもありますよね?」

「うむ、あるかもな」

 これは小言ではないですよねぇ。


「タッパにお持ち帰りできませんか?」

 そうきましたか。


「いつの時代のことを言ってるんだ」

「だって、美味しいものばっかり……」

「ケーキ買って帰るから」

「塩っぱいのが食べたいのです!」

 メイドさん、塩っぱいって。


「煎餅で我慢しとけ」

「ぶぅ〜っ」

 五月先生、煎餅って。

 



【ボロ市】


 五月先生とメイドさん、駅前の和菓子屋さんへ日持ちするお菓子をに買いにきています。

「今日はやけに人が多いな」

「五月様、駅の向こう側でボロ市やってます」

 

 長く続く、冬の風物詩です。

 元は農具や日用品を売っていたボロ市ですが、今は食べ物の屋台の方が多いです。

「そうか。お参りして、暦買おう」


 お煎餅と羊羹を買ったお二人、駅を渡ってボロ市に行きました。

 お寺の近くに暦のお店が出ているはずです。

「あれぇ〜流されます。狭い道に屋台や人が多くて、参道までたどり着けません」

「もう少しだ。はぐれるなよ」

「帰りに絶対、焼きそばとたこ焼きですよ!」


 チャリーン……。

「なむなむ」

 お賽銭を入れて、おふたりとも手を合わせます。

 お寺でのお賽銭には、自分の欲を捨てるという意味があります。

 このおふたりはどうでしょう?


「暦も無事買えたし、行くか」

「五月様、あっちで大たこ焼き売ってました」

「目ざといな、あんなに流されてたし、ちっこいのに」

「ちっこいは関係ありませぬ」

「普通のたこ焼きな」

「大たこ焼きです!」

 少なくとも、メイドさんは欲を捨てる気はないようです。


「わかった、わかった。大たこな」

「あい」

 万灯まんどう行列を横目に、おふたり帰ってゆきました。

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