17 くちゃい・ウインタースポーツ

【くちゃい】


 五月家の近くに銀杏いちょうの植えられた街路樹があります。

「葉っぱ、黄色くなったな」

「そうでございますね」

 五月先生とメイドさん、久しぶりに歩きます。

 

「乾燥させて、しおりにいたしましょう」

 メイドさん、2、3枚落ち葉を拾います。

「あ、それ私も欲しい」


 ところどころに、銀杏ぎんなんの実も落ちています。

「くちゃい」

「どうした?」

「わたくし、銀杏ぎんなんのにおいは苦手です」

 においに敏感なメイドさんには辛いでしょう。


「美味しいのに……」

「えぇ……焼いてお塩、茶碗蒸し、かき揚げもいいですね」

「食べたいな……。拾って帰ろうか」

「と、とんでもない、無理です!」

 素手で触るとかぶれることもあるのでご注意を。


「確かにくさいけど」

「落ちた実のにおいは、どうにも許し難いのでございます」

「そこまで……」

「美味しいんですけどね……」

 おふたり、街路樹を後にします。


「そうだ、スーパー寄って帰ろう」

「へ?」

銀杏ぎんなんいっぱいの茶碗蒸し食べたい」

「はいはい」




【ウインタースポーツ】


 テレビCMが冬仕様になりました。

「五月様、ウインタースポーツできますか?」

 メイドさん、突然の質問です。


「学生の時はよくスキーに行ったがな。今はもう滑れないだろうな……」

「少し練習すれば慣れて、また滑れるようになりますでしょう」

「そうかな」

 あとは筋力の問題ですね。


「スケートはいかがですか?」

「それは下手だった」

「あら〜」

 運動神経良さそうな五月先生ですが、これは意外です。


「ずいぶんな大人になってから、ローラースケートで思いっきし尻打った」

「ふふふ」

 メイドさん、想像しています。


「アイススケートはなおさら。バランスが難しいしな。苦手だ」

「わたくしも苦手です」

 それは納得できます。


「そして今でも、時々尻が痛いことがある」

「お、お医者様行きましょ」

 行っときましょ。

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