14 動詞の活用・つわぶきの花

【動詞の活用】


 五月先生とメイドさん、揃ってお夕飯のお買い物です。

「大根にブロッコリー買ったし、マヨネーズも忘れてません」

「もういいか?」

「はい五月様、お買い物おしまいです」

「よし、帰ろう」


 帰り道、やたら中学生が目立ちます。

『未然、連用、終止、連体、仮定、命令』

 口を揃えて唱えています。


「定期テストでもあるのかな?」

「でも五月様、今は時期ではないのでは?」

 どうやら、塾通いの子供たちのようです。


『読まない、読みます、読む、読むとき、読めば、読めぇー!』

 子供たち、リズムをつけて繰り返し唱えています。


「みんな元気でございますね」

「楽しく勉強する、感心だな。だが、読もうがないぞ」

「あれでは古語ですね」

「ちと違う。古語では仮定は已然になるし」


「難しいです。わたくし苦手でした」

「動詞の活用は雰囲気だな」

 五月先生、物書きとしてその意見はどうでしょう……。



【つわぶきの花】


 最近寂しかったお庭に、黄色い石蕗つわぶきの花が咲きました。

「んー、見事だな」

 五月先生、落ち葉を掃きながらつぶやきます。


「石蕗の花言葉は『困難に負けない』や『謙譲』でございます」

「うむ。寒さに負けず凛としている。こんなふうに生きたいものだな」

 最近、めっきり寒くなりましたものね。


「茎がすっと長く伸びて、五月様に似ております」

「そうか?」

「はい」

 五月先生は全てにひょろっとしています。


「そういうお前も、なかなかへこたれないな」

「そうですかねぇ?」

「頑張り屋で打たれ強い」

「そうでございますか?」

 メイドさん、褒められて浮かれております。


「今夜は熱燗で晩酌いたしま……」

「時に能天気ともいう」

「・・・」

 褒められたわけではないようです。


「晩酌なし」

「しまった……」

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