10 物寂しくて・早起き

【物寂しくて】


「・・・」

 メイドさん、縁側えんがわでぼーっとしております。

 今日は陽射しもないですし、日向ぼっこには少し寒いですよ。


「メイド、何を黄昏たそがれておる?」

「五月様、お庭が寂しいなぁと思いまして……」


「そうだな。春夏は色鮮やかだったからな」

金木犀きんもくせいも終わってしまいました」

 数日風が強い日があり、今年は早くに散ってしまいました。


「ねぇ五月様、秋冬のお花も植えませんか?」

「んー、でもなぁ、この物寂しさもこの季節ならではだからなぁ」

 枯れ葉色ばかりです。


「もしかしてそれは、五月様の父様の想いでしょうか……」

「そうかもしれないな。おふくろも同じようなこと言ってたな」

「そうでございますか……。なら、このままで」


『わしの庭、大事にしてね』

 五月先生の父上が、天からお願いしています。




【早起き】


 午前十時を過ぎています。

 五月先生、寝ぼけ顏で寝室からのっそりと出てきます。

「おはよう」


 メイドさん、用意周到に濃いめのコーヒーを差し出します。

「五月様、また夜更かしですか?」

「んー」

 五月先生、砂糖とミルクを入れながら唸ります。


「まさか、ゲームしてたわけではないですよね?」

「げ? ないない。ちゃんとお仕事」

 なんだか怪しげです。


「なら、も少し早く起きてくださいまし」

「んー」

「昔から〈早起きは三文の徳〉と言うではありませんか」

「三文とくしてもなぁ……」

 現代では、だいたい百円くらいです。


「お金の問題ではございません。人としての徳です」

「うん、それはもう充分に」

「なら、も少し生活費にゆとりがあってもよいのでは?」

 はい、五月先生の負けです。


「今、お金の問題じゃないって言ったじゃん」

「あ……」

 と思いきや、メイドさんの負けです。

 体調管理のためにも、できるだけ早寝早起きを心がけましょう。

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