神無月

06 都民の日・◯◯の秋

【都民の日】


 十月一日、都民の日です。

「五月様、都民の日はお休みですか?」

「休みの学校もあるみたいだが、平日だったら基本会社はやってるだろう」

「へー」


 おふたり、最寄り駅の近くまでお買い物に出ました。

「募金にご協力お願いしま〜す」

「お願いしま〜す」

 ボーイスカウトのユニフォームを着た子供達が、通行人に呼びかけています。


「よし、五百……いや、百円」

「五月様、募金されるのですか?」

「私も中・高生の時、ああして繁華街の街頭に立ったから」

「ふ〜ん」

 メイドさんには珍しい光景のようです。


「いくらかは問題じゃなく、募金してくれると嬉しかった」

「そういう気持ちが大事なのですね」

「お金だけじゃなく想いもきちんと伝えて、有意義に使って欲しいな」

 本当に。

 募金や義援金は人の心なのです。


 メイドさん、バッグからお財布を出しました。

「わたくしも」

「うむ」

 おふたり、子供達の抱えた募金箱に入れました。

 チャリン……。


「十円かい……」

「気持ちです」



【◯◯の秋】


 読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋です。

 ピンポ〜ン……。

「お届け物で〜す、サインお願いしま〜す」

 宅急便です。


「はいはーい」

 五月先生、ハンコを持って玄関に出ます。

「ご苦労様」

 宅急便のお兄さんが、玄関の中にダンボールを入れてくれました。

 宛名はメイドさんです。


「メイド、実家から荷物……って重っ!」

 五月先生には持ち上げられません。

「あ〜い」

 さすが宅急便のお兄さん。

 メイドさん、玄関のたたきでダンボールを開けます。


「何が届いた?」

「ヒロシんとこの野菜と、梨にぶどう、栗でございます」

「食べ物ばっかり……」

 重いわけです。

 じゃがいもや、かぼちゃも入っています。


「今夜は栗ごはんにいたしましょう」

「やったー。栗ごはん好きぃ」

 やっぱりこのおふたりは、食欲の秋ですね。


「まつたけないの?」

「ございません……」

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