第三章 ジャメヴ
第三章「ジャメヴ」1
真人は目を覚ました。
思い出を辿りながら、まどろんでいた。
車内アナウンスが、駅が近づいていることを告げていた。
それでなんとなくざわついた車内の雰囲気が、真人の眠りを終わりにしたようだ。
真人も身支度を済ませ、新幹線を降りた。
ここからはローカル線と路線バスを乗り継いで、さらに北へ二時間あまり。
これが距離と時間の逆転現象なのだ、と真人は実感した。
いまや、東京から二時間足らずで日本の反対側に着く。
だがそこから百キロそこらの山中に行くために、それと同じだけの時間がかかるのだから不思議な話だ。
鉄道は最新鋭の新幹線から、頼り無さそうにガタガタ走るディーゼルカーに変わった。
最初は満席近かった座席も、あれよあれよと空席のほうが増えていく。
代わりに増えたのは車窓の緑とトンネルの数。
過ぎる駅ごとに見かける建物も、ビルではなく点々と民家が姿を現すぐらいで、人口密度は急減している。
狭いと言われる日本といえどもまだまだ人が住める土地はこれだけたくさんあるのだ。
他に見かけるものといえば、そろそろ刈り取りが終わりそうな田んぼや、護岸工事もされていないままの川の流れ。日本の里山の風景。
そんな車窓をぼうっと眺めているうちに、目的の駅に着いた。
列車を降りると、駅前のバス乗り場からさらに路線バスに乗り継ぐことになる。
一日数本しかないバスだったらタクシーにしようと思ったが、バス停の時刻表を見ると一時間に一本程度はある。
鉄道との接続も考えられているようで、そう待たずに始発のバスが来ることが分かった。
それならば、と真人は駅前の土産物屋で少し時間を潰してから、やがてやってきたバスに乗った。
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