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結果、真人は渋々ながら大学に行き、なんともいえない悶々とした想いのまま日中を過ごした。
それで気分が落ち着くはずもなく、それどころか次第に得体のしれない胸騒ぎに支配されて、すべての授業が終わるや否や、一目散に帰宅した。
不安な予感は的中した。
まだ陽も暮れない早い時間に戻ったにもかかわらず、すでに家には誰もいなくなっていた。
美奈子はいつも仕事に行くときと同じように出ていったようで、旅行用のスーツケースはそのまま残っていたし、なんら長旅の気配はさせていなかった。
かといって推理小説さながらの、家が荒らされたような形跡もまったくない。
少なくとも家からは自分の意志で出ていったのだ。
しかし、夜が来ても、次の日の朝が来ても、昼が来ても、美奈子は帰ってこなかった。
美奈子の携帯番号に架けてみたが、「電源が入っていないか、電波の届かないところにいます」の機械音声。
ダメ元でスナックに架けてみたが、シフトがあるのに出勤していないことが分かっただけだった。
美奈子は、はっきりした理由も告げないまま、姿を消してしまったのだ。謎と荷物だけを残して。
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