第6話 追憶3

 夕闇を彩る色が今度はどこかの部屋に変わる。


 どことなく薄暗い室内に漂う雰囲気は妖しく艶かしい。


 扉が開くと男子生徒とあいとが緊張した表情で入ってきた。


 二人の男女はともに緊張を纏っていたが、男の方は欲望が抑えきれずに行動の端々にそれがにじみ出ていた。


 女の方は不安と好奇心が半々といったところ。


 あいとがバスルームに行こうとすると男は我慢出来ずに抱きついて強引にキスをする。


 あいとは女として求められる事の悦びをこの時に初めて感じたのだろうか。



 場面は変わり下着姿のあいりがベッドにいた。


 背伸びして買った大人っぽくもかわいらしい赤いレースの白い下着。


 あいとの息が荒くなりその柔肌は薄い桃色を帯びている。


 男の手がそれを脱がそうとすると、あいとは躊躇いをみせた。


 その抵抗は空しくあいとの全てが露になった。


 男はそれを見て明らかに困惑し動揺したが、性衝動はその程度では止まらなかった。



 場面は変わり、一人ベッドで横になっているあいとは泣いていた。


 まるで飼い主に見捨てられた仔猫が、あるいは交通事故で母猫を亡くした仔猫が行くあてもなく孤独に耐え切れず鳴いているような、そんな姿がそこにあった。


 たくさんのテッィシュが散乱したあったそこに投げ捨てられていたお金を拾い、あいとは料金を精算しようと立ち上がった。


 その時、全てを理解した。


 男の困惑、あいとの涙、投げ捨てられたお金……。


 許せない、許せない、許せない……。



 悲しみに覆われた色の世界は途絶えた。


 -Mayが呟いている何か、それは……。


 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。


 -Mayは両手で顔を覆い泣き崩れた。


 それは月が沈み明けの明星が朝日の魁となる頃まで。

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