第5話 追憶2
真っ暗な教室に色が浮かび上がった。
多彩な色は闇を塗りつぶし、瞬く間に日常の中学校を描き出した。
机も椅子も黒板も外の景色も、行きかう生徒達も全てが鮮明に。
これは休み時間なのだろうか。仲の良さそうな生徒が集団でおしゃべりをしたりトランプに興じていたり、男子生徒達は麻雀をしている光景が浮かぶ。
そこでは色んな名前が飛び交っていた。あいり、たくや、さやか、しょう、えみ……。
まさき! その言葉を発したのはこの教室で最大の集団は七人の女の子達の誰か。
まゆ、なな、もえ、かすみ、ゆい、ももか、れい、あいと。
あいとと呼ばれる中学生の女の子はーMayにとても良く似ているような気がした。
会話からあいとはまさきという名前の人がとても好きだという事が分かった。
そしてあいとはよく笑う女の子であった事も。
多彩な色は中学校から夕暮れの校舎を背景に描いていた。
校門であいとは誰かを待っているようだ。
やがて駐輪場から自転車に乗って出てきた背が高くてやんちゃな男子生徒。
彼はあいとに声をかける。あいとは彼に笑顔を向ける。
そして自転車に二人乗りして下校した。
多彩な色は夕闇に変化した。見覚えのある家がそこには描かれていた。
あいとは自転車から降りると、やんちゃな彼の方を向く。
彼はあいとを力いっぱい抱き寄せると不器用なキスをした。
あいとの表情はとても幸せそうに見えた。
彼はあいとに後ろ手を振り向かいの家へ帰っていった。
あいとは彼の姿が玄関の扉で隠れてしまうまでずっと見つめている。
ーMayの追憶はまだ続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます