第4話 追憶1
まさきの初恋は小学生の時だった。
クラスの中で一際大人びていたさちこの事が気になって仕方がなかった。
引っ込み思案だったまさきはさちこと話すことすらままならずに片想い。
ずっと大好きだったから、ある時に意を決し年賀状を書こうと思った。
長い時間をかけて書き上げたのに、どうしてもポストへ投函出来なかった。
結局それを捨てる事も出来ずに引き出しの奥に隠していた。
しまっていたのではなく隠していたのだ。
誰かに見られると恥ずかしい感情を抱くのは、心に秘めておきたいものだから。
初めての恋は中学生になると別な女の子に向けられた。
小学校時代あれほど夢中に見ていたのに、初恋なんて呆気ないものだ。
人生で二番目の恋はまさきの心の錘を取り払う勇気をくれた。
ほとんど会話した事もないひとみにまさきは告白した。
ひとみは驚いてそれでもまさきに返事をくれた。
まさきは人生で初の失恋を経験した。
でも、不思議とまさきの心に失意の感情は湧き起こらなかった。
好きな女の子にまさきの存在が認められた事が何より嬉しかった。
中学生時代の恋は少年を少し大人に近づけた。
-Mayは真っ暗な教室にいた。
さっきまでいたあの教室とは何か様子が違う。
胸を押さえ手首を撫で透き通るほどに細く美しい指先で黒板に触れる。
何かに苦しみ誰かを恐れるような、痛みと孤独がまとわりついたよう。
差し伸べる手を力強く掴んでくれる救い主を求めているかのようだ。
ーMayが何かを呟いた。
それは夜の学校に色をつけた。
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