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 読み終えた原稿を机に置き、私は台所で朝食の支度を始める。先生の好きなお味噌汁、今日の具材は何にしよう。

 ……そうだ、シンプルに油揚げとお豆腐とワカメ。先生が一番好きな具材にしよう。


 お味噌汁を作っていると、先生の背中がゴソッと動いた。

 もぐらが土から顔を出すみたいに、ボサボサの頭を持ち上げる。


「おはようございます」


「君か、おはよう」


 君かって、このお屋敷には私と先生しかいないよ。


「徹夜されたのですか?」


「ああ、いい匂いだな。腹が減った」


「はい。もう少し待って下さいね。先程勝手に原稿を拝読しました。すみません」


「そうか」


「琴子の気持ち、よくわかります」


「そうかな。実は執筆していて、何か違う気がした」


「えっ?」


 先生は立ち上がり、自身の頭をガシガシと掻きながら私に近付く。

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