直人side

113

「ここは……何処だ?」


 目を開けると、そこは見慣れない部屋だった。ピンクの花柄、ふかふかのベッド、俺の隣には爆睡している担当。


「担当……!?」


 ――微かな記憶を手繰る。

 俺は昨日彼女を捜すために、担当と祭に行った。


 そこで俺は担当と彼女がルームメイトだと知る。彼女は男と同棲していると思っていた。本人も認めていたからだ。だが彼女が一緒に住んでいたのは、小生意気な担当だった。


 その後、祭で担当に彼女との関係を根掘り葉掘り聞かれ、俺は黙秘を貫くために酒を浴びるように飲んだ。そのあとの記憶は欠落している。


 上半身を起こすと、俺の隣には担当が淫らな格好で寝ていた。あろうことか下着姿だ。


 担当の洋服はベッドの下に脱ぎ散らかされ、まるで蛇が脱皮したあとのようだった。


 俺が担当を脱がせたのか?

 俺は担当を抱いたのか?

 この俺が、酒に溺れて理性を無くし、この担当を……。


 それでは、小説の主人公と同じではないか。

 雄としての自分を恥じ、頭を抱えて項垂れる。


「抱いてませんよ」


「うわっ」


 振り向くと担当が枕に肘をつきこちらを見ていた。ブラジャーからはみ出している豊かな胸の膨らみ。俺は目のやり場に困る。


「只野先生でも、『うわっ』なんて言うんですね」


「それはどういう意味だ」

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