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 カフェを出て、店長のあとをついて歩く。オフィスビルの一角に勤務先があると思っていたが、そこはオートロック式のマンションだった。


 もしかして、ここが寮?

 女子寮だからオートロック?目黒に寮があるなんて、リッチだな。


 そう思いながら、黙って店長について行く。

 エレベーターで三階に行き、薄暗い廊下の一番奥の部屋のドアを開けた。


「入りなさい」


「はい」


 室内は1LDK。

 家具は全て揃っている。まるで数日前まで誰かが生活していたみたいに。


「あの……ここが寮ですか?立派なマンションですね」


「寮?そうだね、ここが御園さんの部屋だよ。自由に使ってくれ」


「こんな素敵な部屋を自由に?一人部屋ですか?あの……店長、新しい職場は?」


「新しい職場?ああ、あれね」


 店長はLDKの隅に置かれたデスクのパソコンを指差す。

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