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「私をキャンキャン言わせているのは、只野先生でしょう。編集長の友人でなければ……」


「俺は一樹の友人ではない。だとしたら何だ、はっきり言ってみろ」


 担当は喉元にあった言葉をのみ込む。


「失礼しました。少し熱くなりすぎました。ご連絡下されば取りに伺いますので、明後日までにプロローグと一章の原稿を宜しくお願いします」


 担当はスクッと立ち上がると、プイッと部屋から出て行った。


 頭の中にパソコンがあるわけではない。一日二日でそう簡単に書けるか。

 思い描いたものが、そのまま活字に変換出来る機械があるのなら欲しいものだ。


 むしゃくしゃした気分を落ち着かせるため、俺は取り敢えずスーパーKAISEIに買い物に行く。彼女の顔を見ると、最近心が穏やかになれるから。


 小説の主人公として、イメージしているに過ぎない相手。それなのに一日一錠の安定剤の如く効果覿面。不器用な彼女が働いている様を見ていると、自分も書ける気がしてくるから不思議だ。


「すみません。いつもいる眼鏡の冴えない女性店員は?」


「眼鏡の冴えない女性店員ですか?御園でしょうか?」


「そうだ」


 名前をド忘れしたが、『眼鏡』と『冴えない』のキーワードで検索出来るとは。

 彼女のイメージは『冴えない女』で浸透しているようだ。

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