54

 担当がいきなり、テーブルをバンッと叩いた。

 女だてらに、何をする。俺の座卓を破壊する気か。


「只野先生、ふざけてます?今時、中高生でももっと立派なプロット書きますよ。書く時間がなかったのなら、正直にそう仰って下さい。これでは章のタイトルにもならないわ。文庫本の場合でも、校正や制作に要する期間は平均で三ヶ月です。pamyuは週刊誌なんです。口頭でも構いません。主人公のイメージはわかりました。プロットをお話し下さい」


 口下手な俺にプロットを話せと?仕方がない、そんなに聞きたいなら話してやる。


「恋愛下手な女が一夜の相手に女として開花され、刺激的な……刺激的な……」


「刺激的な性的関係を持つと?それはR18ですか?」


「誰も性的とは言っていない。友達は性的要求をしてはならない。純愛だ、純愛」


「友達?純愛ですか?イマイチ、コンセプトがわからない。強いて申し上げるならR18の方が売れますけどね。ですがそれだけでは、全体のイメージが掴めません。全十二回の連載です。せめて一章ごとのプロットを作っていただけませんか?一章、四百字詰めの原稿用紙、二十五枚ですよ」


「そんな都合よく纏まるか」


「纏めるのがプロでしょう。pamyuのページ数は限られているんです」


 生意気な編集者だ。

 初対面の印象とはかなり異なる。契約書にサインすれば、こうも態度が豹変するのか。


 恐るべし、女編集者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る