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 一時間後、玄関のチャイムが鳴る。ガラス戸に移るシルエットはスレンダーで長い髪の女性。


「只野先生、セシリア社の相武です」


「君か」


 セールスマンでないことを確認し引戸を開ける。


「只野先生、原稿を受け取りに来ました」


「原稿?プロットはまだ走り書きだ」


「プロローグと第一章の原稿も拝見出来ますか?」


「上がれ」


 せっかちな女だな。

 取り敢えず担当を家に上げ、走り書きのプロットを差し出す。


「主人公の女性は、歳は二十七〜二十八。独身、男性経験なし。恋の相手は三十歳独身。顔はイマイチ、性格は捻くれ、女性からも嫌われているが、夜はテクニシャン。これ……只野先生のノンフィクションですか?」


「ノンフィクションのわけないだろう。恋の相手は俺とは真逆だ」


「そのまんまですけど。冴えない者同士、全くときめかないですね」


 は?この俺が顔はイマイチ、性格は捻くれ、女性からも嫌われていると言うのか?

 全くときめかないとは、失敬な。


「バカバカしい。フィクションに決まっているだろう」


「第一章、出逢い。第二章、ふれあい。第三章、肉体関係?これは何ですか?」


「途中までしか書いていないが、一応プロットの……下書きだな」

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