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 ◇


 連日小説のヒントとなる刺激的な出来事がないかスーパーKAISEIに出向いたが、何ひとつ参考になることはない。


 彼女は愛想よく俺に接する。スーパーに連日通い詰め、そろそろ友達から次の段階へと進みたい。


 ――小説でいえば、第一章だ。


「只野先生、いらっしゃいませ」


 どうすればスーパーの店内だけではなく、外でも逢うことができるのだろう。


「君、休みはいつだね?」


「…ぇっ」


「これはデートの誘いではない。友達同士で休日を過ごしたいだけだ」


「……友達?同士で?」


「そうだ。俺達は友達だ」


 無理矢理笑顔を作るが、笑うと未だに頬がピクピクと痙攣する。


「……明日は、お休みですけど」


「では、映画でも観に行かないか。……ではない、映画に行きませんか?」


 彼女の口元が少し緩んだ。

 これは、脈があるかも。そもそも俺の誘いを断るなんて、十年早い。


「すみません。明日は用事があるので」


「用事?それならば仕方がないな」

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