刺激的な恋愛小説
直人side
2
―都内、某出版社―
俺の目の前で、小生意気な編集者がパラパラと原稿をめくる。
数枚めくり、原稿をパタンと閉じた。
「只野さん、出だしからインパクトに欠けますね。読者を惹き付ける力がない。はっきりいって、あなたの作品はつまらない。どうせ書くなら、大人向けの恋愛小説を書いたらどうですか?」
「恋愛小説…ですか?俺は歴史小説しか書けません。特に戦国ものは得意分野です。戦国武将といえばなんといっても織田信長でしょう。戦国の世は実に奥深い」
編集者は前髪を掻き上げた。胸ポケットから煙草を取り出し口にくわえ、ライターで火を点け脚を組んだ。
丈の短い黒いタイトスカート。白い太股と赤いハイヒールが目の前にちらつく。
こいつは女だ。
しかも俺よりも若い女。
「読者は刺激的な恋を求めてるんだよね」
フーッと煙草の煙を吐き出し、つまらなそうに右手の人差し指で原稿用紙の端をいじっている。
世の中に禁煙マークが蔓延る時代に、編集者が作家の目の前で白い太股をちらつかせ喫煙するのか。
こいつの上司は部下にどんな教育をしているんだ。
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