第8話 山狩り(2)

「山狩りだ」



 と聞いてカトーも立ちあがり、かまどの石を崩して穴に蹴り入れ、土をかぶせて均してしまった。



「ミトラちゃん、じゃったかの。隠れんで」



 ミトラは身をすくませたが、なおも用心深い目つきをして、膝を抱えたままだった。



「べつに馴れあわなくたっていいからよ。お前だって、とっ捕まんのは嫌だろ」


「あの連中、そもそも誰なんじゃ」


「それだ。ミトラ、お前、襲ってきた連中に心当たりはねェのか?」



 ミトラは、なおも押し黙っていたが、



「知らんばい」



 ようやく、それだけ言った。



「そうかい。まあ、いいや。向こうから来てくれてんだから、とっくと観察してやろうぜ」



 ほどなくして男たちが現れた。


 総勢およそ十四、五人が二人一組になり、かたや木立や茂みを松明で照らし、そこに長槍を突き込んでいる。

 引き上げていった五十余人を数班にわけて、山狩りをしているのだろう。


 ひとりが、かまどの痕跡を見つけて、



「副隊長!」



 そう呼ぶと、それらしい男が歩み寄り、



「ふん、ここで火を焚いたか」



 長槍で掘り返すと、木炭がまだくすぶっていた。



「これで隠したつもりか、素人め」



 と嘲笑して、



「慌てて消したのが、すぐにわかるではないか。してみると、まだそう遠くにいってはいないはずだ」


「ひとりでしょうか」


「なんの苦労もなく、ぬくぬくと育って、こんなところで火など起こせるものか」



 どうやらミトラのことらしい。



「何者かが一緒にいるはずだ。そやつらが隊長たちを殺したのだろう」


「何者なのでしょう」


「わからん。が、四人や五人ではあるまい」


「大勢ですか」


「隊長たちは、抵抗らしい抵抗もできずに殺されていた。多勢に無勢であったはずだ」



 十数名の部下たちは、思わず長槍を握りなおしていた。



「急げ。夜とはいえ、そのような人数を隠しおおせるものではない。必ず見つけて討ちとるのだ。人数が同じなら我々が勝つ」



 そう副隊長が訓示をすると、部下たちは右の拳で左胸を叩き、踵を鳴らしてそれに応えた。

 彼らはまた二人一組になり、長槍で藪を突きながら去っていった。

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