第7話 山狩り(1)

「なァ。オレたちが悪かったからよ、もうちっとこっち寄んな」



 スキピオが火をつつきながら言った。



 旧街道から脇道に入り、やや平らな場所をみつけて、地面に掘った穴の周囲に石を積み、木炭を詰め込んだところで日が暮れた。

 今はスキピオが、かまどの番をしている。



「おい、聞こえねェのかい」


「変態とは馴れあわんばい」



 ミトラは離れた場所に座っていた。


 着ていた服は引き裂かれてしまったので、葛籠にあった単衣に着替え、腰に長布を巻いて、肩からショールをかけている。

 本人のものだったらしく、サイズはぴったりだった。


 それはいいのだが。


 ミトラは決して近づいてこようとしなかった。

 逃げずにいるところをみると、敵ではないと思ってはいるらしい。

 だが、カトーとスキピオは、のっけからヌードをガン見したばかりか、モロ出しダブルのアブノーマルプレイをお見舞いしてしまっていた。

 おかげで、すっかり警戒してしまったのだ。


 

「だからあれは、ちっとばかし対応を間違えたんだってばよ。何度も謝ってるじゃねェか」



 そこへカトーが戻ってきた。

 なにやら抱えている。



「用意できたで」


「水場はあったか?」


「この下に小川が流れとった」


「こっちもいい頃合いだ。下の方に突っ込んじまってくれ」



 カトーは大きな葉でくるんだ包みをふたつ、燃えさかる枯れ枝の隙間に突っ込んで、棒でかまどの奥に押し込んだ。



「腹が減っとるじゃろうが、もちいと待っとれや。旨いのを焼きよるけえ」



 と声をかけたが、ミトラはじろりと睨みかえしただけだった。



「ありゃ。まだ、むくれとるんか」


「もう放っとけよ。いつまでも人の失敗を根に持ちやがってよ」


「まあ、これが焼けたら気分も変わるじゃろ」



 カトーは苦笑して、



「あっちのほうも、ぼちぼちかの」


「ああ、来てもいい頃だな。ちっと見てくるから、火のほうを頼むわ」



 スキピオはそう言い残して、木立の間に入っていったが、しばらくすると戻ってきて、



「来たぜ。山狩りだ」



 声を低くして、そう言った。

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