第3話 好きモノたちの最期

「へへ、気を失っちまった」



 にやけながら、男は早くもベルトを解きにかかっていた。

 目の前には、衣服を無残に引き裂かれ、半裸のまま仰向けに寝かされた少女が、どこかに頭でも打ったのか、青白い顔で気絶していた。



「どうせ死ぬんだから、今生の名残に情けをかけてやろうってのに、無駄な抵抗しやがって」



 少女を押さえつけている男たちの傍らに、また別の大男が、ひとり不埒な行為には加わらず、腕を組んで佇んでいた。

 その見上げるような大男が、



「あんたらも好きよねえ。兵隊ってみんな、どっちもいけるクチ?」



 野太い声で、そう言った。



「へへ、陣詰めなんかが長引きますとね、どうにも辛抱たまらんってわけで、こういう味も覚えちまうんですよ。あ、ヤゴの旦那もどうっすか?なんからお先に、その……なくならないんでしょ?あっちの欲も」


「まあね。でも、やめとく。こんなところで、はしたないもの」


「こういうのがまた、風情があっていいんですがね」


「何でもいいけど、早く終わらせて部隊に合流してね。あんたが隊長なんだから。それに、あたし等が言うのもなんだけど、このへん物騒だし」



 大男はそう言い残して、のっし、のっしと遠ざかっていった。

 それを見送りながら、



「へっ。いくら強くっても、大事なところを切り落としちまってるなんて、なんとも気の毒なことだぜ」



 とつぶやいて、少女を押さえつけている部下に命じた。



「おい、足を抱えあげろ。受け入れる態勢をとらせるんだ」


「へえへえ、ただいま。しかしまあ、こうしてると、まるで本当に女みたいな……」


「まあ見てろ。その人形みたいな顔を、ひいひい喚く泣き顔にしてやるからよ」



 隊長らしき男が股引をずりおろして、お待ちかねのご馳走に生唾をのみ、いよいよのしかかろうと身をかがめたそのとき、



「あ痛ッ!」



 と尻をおさえて振り向けば、いつの間に忍び寄ったのか、小柄なぽっちゃり系……スキピオが、慣れた手つきで短剣をくるくるとまわしていた。

 その向こうにカトーも見えるが、こちらは背負った大刀をまだ抜かず、だらりと両手をぶささげている。



「こんなところで汚ェケツを晒してっからだ。あのな、このへんは物騒なんだぜ」


「な、何者だ!」


「ザコのテンプレかよ。んじゃまァ、こう返そうかい。問われて名乗るもおこがましいが、人呼んで韋駄天のスキピオと発します、とくらァ」


「ワシはカトーじゃ」


「てめェらを殺す者の名前だ。そのうち追っかけてくから、先に行って、あの世で待ってな」

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