第7話 全否定だにゃん
バーベキュー場に着くと、一真さんが車の後ろのトランクを開けて、中からクーラーバックを取り出したにゃん。
すばるも鍋の入った箱と何かが入ったビニール袋を取り出すにゃん。
「それはなんだにゃん? 鍋?」
「ダッチオーブンだよ~。アウトドア用の鍋で、これを使うと色々作れるの」
尋ねてみれば、すばるは上機嫌で答えるにゃん。
「まあ家でも色々作れますけどね」
「あれ、そうなんですか?」
「今度作りましょうか」
「うふふ、楽しみにしてますね」
そして流れるように一真さんが料理できるアピールを挟んできたり、二人の生活感を出してくるにゃん。
……まあ、作戦通りにゃん。
受付を済ませ、指定された場所に行くと、既に日除けとバーベキューコンロと机と人数分の椅子がセットされてるにゃん。
席番も確認した所で、早速一真さんは荷物を下ろして、コンロに木炭を入れて火を起こし始めたにゃん。
すばるもダッチオーブンを取り出して色々と準備を始めたにゃん。
場所も確認したので、早速鰍はすばると目配せして声をかけるにゃん。
「それじゃあ鰍はさっきの所でお肉とか野菜をもらってくるにゃん」
打ち合わせ通り、まずはこの場を離れるにゃん。
「ありがとうございます。食材をよろしくお願いします」
「任せるにゃん!」
鰍はそそくさとその場を後にするにゃん。
「……あ、西浦さん、鰍だけだと荷物を持つの大変だと思うので、ついていってもらえますか?」
「えっ、あ、わかりました」
すぐ後ろですばると啓介のやりとりが聞こえてくるにゃん。
啓介が鰍に追いついてきた所で、早速啓介いびりを始めるにゃん。
「まさか、あれ程ポンコツな振る舞いで一真さんからすばるを奪えると思ってたなんてびっくりにゃん」
「は? 特に大きな失敗をした訳でもないだろ」
不思議そうに啓介が首を傾げるにゃん。
「例えば、さっき車から降りた時、すばるの代わりに荷物を持ったらそれをきっかけに多少話せたかもしれないにゃん」
「確かにそうかもしれないけど、そんな大きなミスじゃないだろ」
啓介がちょっと不機嫌そうに言うけれど、話題を変えてはやらないにゃん。
というか、啓介がその辺に不慣れだったおかげで、色々とネチネチ言う材料ができて良かったにゃん。
今の鰍は嫁をいびる姑にゃん。
「さっきだってすばるに言われる前に動かないなんて、自分はロクに気も利かせられない男ですって言ってるようなもんだにゃん」
「でも、それは別に致命的な失敗ではないだろ……?」
なおも鰍の指摘する事は大した事じゃないと主張する啓介に、鰍はワザとあからさまに呆れた様子で大きなため息をつくにゃん。
「でも、すばるが夢中になってる一真さんはその辺の気配りがとてもよくできる人だし、すばるも一真さんのそういう所が好きってこの前
「……」
流石にこれには言い返せないらしく、啓介が言葉を詰まらせるにゃん。
「それに、身長とか顔とか稼ぎとか今すぐどうこうできないもので全て負けてるのに、努力でどうにかできる部分も何もしないで、それで一体どうやって一真さんからすばるを奪うつもりなのかにゃん?」
「だけど、すばるさんだって俺の将来性を見てくれれば……!」
小馬鹿にしたように啓介に言えば、啓介は妙に元気よく反論してくるにゃん
「将来良い会社に就職する可能性もあるけど、就職に失敗する可能性もある名門大学の大学生と既に高給取りの社会人だったら後者の方が需要は高いにゃん」
冷ややかに言ってやれば、啓介は言葉に詰まったにゃん。
ちょうど申し込んでいたバーベキュー用の肉と野菜セットを受け取れる場所に着いたので、黙った啓介を放置してさっさと鰍はお目当ての食材を交換用のカードと交換するにゃん。
「でも、俺もすばるさんの趣味も調べてきたし、その話で盛り上がれば……」
荷物を受け取って、それぞれ肉と野菜を分けた時、啓介が苦し紛れに何か言い出したので、とりあえず鰍は元の場所に向かいながら鼻で笑ってやったにゃん。
「すばるは、ちょっと調べた程度の知識で偉そうに自分の好きな作品の事を語られるの、一番嫌いなんだにゃん。好きな分思い入れも強くて、にわか知識ですばるをぶち切れさせて、日が暮れるまで延々作品について一方的に語られたくないならやめとくにゃん」
「は!? なんだよそれ……」
啓介が見るからにドン引きした様子で言うにゃん。
「しかも一度でもそういうやらかしをした奴はすばるの中で軽蔑の対象にされて、その後レッテルが消える事は多分ないにゃん」
静かに首を横に振りながら鰍はそう付け加えて一真さんがついて来れないであろう、アニメやゲーム系の話を啓介に封印させるにゃん。
「だったらどうしろって言うんだよ」
「詳しくないならその話題を出さない方が無難にゃん」
そっけなく鰍が答えれば、啓介はまた黙り込んだにゃん。
……これで下準備は整ったにゃん。
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