第6話 熱々だにゃん

啓介に今度の土曜日にすばるとその彼氏と鰍の三人でバーベキューに行く事になったから一緒に来るかとダイレクトメッセージで話しかけてみたら、どうしてもって言うのなら行ってやってもいい。みたいな返事が来たにゃん。


鰍: どうしてもって言う訳でもないから来なくてもいいけど、その場合、今後鰍から+プレアデス+関連でしてやれる事は無いにゃん。


 と、返したら冗談だよ本気にするなよなんて言いつつ、参加したいという返事が返ってきたにゃん。


 日程は鰍とすばると一真さんの都合のいい日に合わせたにゃん。

 でも、鰍は前日にラジオ番組の収録があって下準備とか手伝えないと伝えたら、すばるも一真さんも準備は全部こちらでしておくから、大丈夫だと言ってくれたにゃん。


 作戦もこの前出た案をたたき台に、色々と練り直して、正直それだけでかなりワクワクしたにゃん。

 おかげでバーベキューの前日、鰍はずっとご機嫌だったにゃん。


 バーベキュー当日、一真さんに車で家の前まで迎えに来てもらって鰍は二人に合流したにゃん。

 車の事は詳しくないけど、座席はやたら座り心地が良いし、高級感があって、なんか高そうな車だったにゃん。


 後ろの席から運転席の一真さんと助手席のすばるを見ると、トレンディドラマのワンシーンみたいで、なんか腹立つにゃん。


 最初は啓介とは現地集合で良いんじゃないかって話になってたけど、すばるが頑なに啓介も車に乗せるべきと言うから、啓介の家の最寄り駅近くで待ち合わせて合流したにゃん。


 啓介は一真さんと車を見て呆然としてたにゃん。

 最初はなんでそうしたがるのかわからなかったけど、今、啓介の反応を見てわかったにゃん。

 啓介にすばるの彼氏という設定の一真さんとのステータスの差を感じさせたかったんだにゃん。


「そういえば昨日、稲葉から十件くらい夜中に着信があったんですよ。知らない間に電源切れてて、気付くの夜が開けてからになっちゃったんですけど……」

 車内に啓介を招くと、早速すばるは挨拶もそこそこに、いきなり内輪ネタを挟んできたにゃん。


「稲葉も相変わらず面白そうな事になってそうだにゃん」

「一真さんは何か聞いてます?」

 すばるが一真さんに尋ねるにゃん。


「多分、しずく嬢の屋敷でなにかあったんじゃないですか。この前お泊り会だなんだと言ってましたし」

「ああー……」

 一真さんの言葉に、すばるの妙に納得したような反応が全てを物語ってるにゃん。

 

「というか、その様子だとかけなおしてないにゃん?」

「一応朝にかけ直したんだけど出なくて、その後も特に連絡来ないからまあ別に良いかなって」

 普通ならもうちょっと心配してもいいような気はするけど、まあ稲葉だからしょうがないにゃん。


「またスマホ壊されてないと良いですけどね」

「高校の頃から連絡先だけは定期的にバックアップ取る癖がついてるらしいですし、仮に壊されてても大丈夫だとは思います」

 もはや稲葉本人も周りも稲葉のトラブル体質に順応しきっているにゃん。


「……稲葉って、もしかして高校時代お前が付き合ってた奴か?」

「啓介憶えてたにゃん?」

「というか、すばるさんの彼氏って、俺が高校の時あった事ありますよね。確かすばるさんじゃない綺麗な女の人と一緒にいたような……」


 驚いたのは、啓介が高校時代チラッと会っただけだった稲葉や一真さんを覚えていた事だにゃん。

 とりあえず、誤解の無いように一真さんと霧華さんの関係は否定しておくにゃん。


「綺麗な女の人っていうのは、たぶん霧華さんだにゃん。今は別の人と結婚してるにゃん」

「そういえば、ありましたね。そんな事も」

「啓介さん、稲葉や一真さんと面識あったんですか?」


 ……まずいにゃん。

 啓介を放って置いて内輪で盛り上がるはずが、逆にすばるが蚊帳の外みたいになっちゃったにゃん。


「ええ、まあ、高校の頃にちょっと……」

「ふーん、そうだったんですね」


 すばるは普通に話してるけど、この前高校時代のあれこれについてお小言を言われた後にこの話題は、あまりよろしくないにゃん。

 でも、実際この前話した以上の事があった訳でもないから、なんとも言えないにゃん。


 なので、話題を変えてしまう事にするにゃん。

「ところで、バーベキューの仕込みに参加できなくてゴメンだにゃん。現地で手に入るセットの他に色々用意してくるって言ってたけど、何を持ってきたのかにゃん?」


「うふふ、それは着いてからのお楽しみだよ。昨日の夜と今朝、一真さんと色々準備したから、楽しみにしててね」

「相変わらず、羨ましいくらいに熱々だにゃん」

「えへへ、そう見える? やっぱりこういう時住んでる所が同じだと便利だよね」


 すばるも話に乗ってきて、一真さんとの仲良しアピールをする方向にシフトしてきたにゃん。

 そして嘘は言っていないものの、会話から同棲していると匂わせてくるにゃん。

 良い女風の演技になると素で言っているのか、わからなくなるレベルで完成度高いにゃん。


「私バーベキューって初めてだから、今日はホント楽しみでつい張り切っちゃった」

「何を持っていくか考えるところから随分とはしゃいでましたもんね」

「だってネットでレシピ探したらどれも楽しそうで美味しそうなんだもん」


 ……本当に演技、なのかにゃん?

 当初の目的を忘れて普通にバーベキューを楽しもうとしているようにも見えるけど、まあ、鰍の隣に座った啓介はさっきから黙りこくってるので良しとするにゃん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る