エピローグ


「ねぇ、レイチェル。っで、その続きは?」


 得意満面に、催促の電話に怯えるエマに経費の領収書を叩きつけた後、さらにもったいぶってから、レイチェルは今日、盗み聞いた話をエマに話し始めた。


「えっと、続きは……はっ!」


 レイチェルは、肝心なところのページ同士が何かでくっついてしまっていることに気が付いた。剥がそうにも、ページ全体がくっついていて剥がれない。


「ねぇってば、レイチェル。もったいぶってないで続きを教えてよ」


 エマは電話機とペン先を交互に見ながら、切羽詰った風に言ってくる。

 だが、まさに切羽詰まっているのは、誰あろうレイチェルだった。


「(やばい。やばいよ……メモに書いてるからって話の内容なんて覚えてないし、サフィのおっぱいの感触しか覚えてないよ……唾で少しずつ溶かしながら……よし、いけるっ!)」


 唾液で湿らせるとページの先が少し剥がれた。


「甘い……をおうっ!」


 そして、レイチェルはそれが蜂蜜であることを思い出した。


「甘い?甘いって何?ちょっと、肝心なところが書けないんだけど……って今すっごい嫌な音がしたんだけど、何かが破れる音がしたんですけどっ‼」


 思わず身を乗り出すエマ。その視線の先には……


「うへぇ……」 


 奮戦叶わず、無残にもページを破りとってしまったレイチェルの姿があった。 


リリリーンッ リリリーンッ


その時、エマが一番恐れていた悪魔の電話が鳴った。


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