そんなのどかな日常

ふわっと欠伸をする放課後の調理室。

眠くて眠くてしょうがない。


「有里依、欠伸しすぎ」


「だってさくらー、眠くてしょうがないんだよ」


「まあ、6限に体育はきついわよね」


「でしょー?」


6限の体育で散々体を動かしたのだからこの眠気は仕方ないと思う。

さっきから欠伸が止まらないんだ。


「有里依ちゃん本当に眠そうだね。私もちょっと眠いかも」


今日の調理部には珍しく沙斗子も参加している。

メニューがパンケーキということもありリベンジしたいというので連れてきた。

沙斗子は変なアレンジさえしなければそれなりに料理できるんだから頑張ってほしいところだ。


「沙斗子、あんまり混ぜすぎないようにね」


「オッケー、じゃあこれくらいでいいかな?」


「うん、それで大丈夫。多少ダマが残ってるくらいで十分だから」


さくらの丁寧な指導もあり沙斗子のパンケーキは無事に出来そうだ。

焼くのは2人に任せて、私はトッピング用の生クリームを混ぜる。

少し柔らかめの方がとろっとして美味しいかな?

調理室にはパンケーキが焼けるいい匂いが漂い始めていた。


「もうひっくり返していい?」


「もうちょっと待って。表面に泡が浮いてくるまで焼いてね」


「うーん、まだかなあ」


「あ、そろそろいいかも。沙斗子ひっくり返せる?」


「やってみる」


さくらと沙斗子ののどかな会話を尻目に私はのんびりと生クリームを泡立てていた。

これくらいでいいかな。


「さくら、生クリームこんなもんでどう?」


「うん、いいんじゃない」


「じゃあフルーツ洗ってるね」


「よろしく」


「さくらちゃん、ちゃんとひっくり返せたよ!」


「お、いい感じじゃん。沙斗子も普通にしてれば料理うまいのよね」


「余計なことはしちゃダメだって勅にきつく言われたからね…」


トッピング用のイチゴやブルーベリーをさっと洗ってザルにあける。

今日のメニューは明日に持ち越せないから3人で美味しくいただいてしまおう。

せっかくだから追瀬君や藤崎君も呼べばよかったかもしれない。

でもそんなに量もないし無理だね。


「有里依、パンケーキ焼けたわよ」


「こっちも準備オッケーだよ。盛り付けはパンケーキの粗熱が取れてからの方がいいかな」


「そうね、生クリームが溶けちゃうからね」


「それまで洗いものでもしますか」


「頼んでいい?」


「うん、大丈夫」


さくらと沙斗子からボウルやらフライパンやらを受け取り洗う。

その間にパンケーキの粗熱も取れるだろう。


「もういいかな?」


「うん、いいんじゃない。沙斗子もトッピングする?」


「やるやる!」


「じゃあ、はい、先に生クリームかけてね」


「任せてよ」


3人でそれぞれの分のパンケーキにトッピングをしていく。

ちなみに1人3枚ずつ重ねた本格仕様だ。

まずは生クリームかけて…うん、いい感じ。

次にフルーツをカットしてぱらっと周りに散らす。

カットしてないフルーツはパンケーキの中心に盛り付ける。


「できた!」


「わあ、有里依ちゃんの美味しそう!」


「でしょ?さくらと沙斗子はどんな感じ?」


「私もできたわよ。どうよ」


さくらのは生クリームがたっぷりかけてあって、イチゴとブルーベリーがケーキのようにパンケーキの淵に並べてある。


「おお、さくらのも美味しそう」


「ふふん、そりゃあ私が作ったんだもの」


「沙斗子のは?」


「…いまいちかな…」


沙斗子のは乱雑にいろんなものがごちゃっと並べられていた。

どうしてそうなった…。


「まあ、ほら、味は大丈夫だから」


かける言葉が見つからなくて適当な慰めを口にする。

普段のお弁当はそれなりにきれいに並んでいるのに…。


「まあ、まあ、いいじゃん。食べよ!」


さくらが話題を切り替えて3人で席に着く。


「「「いただきます」」」


「ん、美味しい」


「ね、ちゃんとパンケーキの味がするよ!」


「そりゃそうでしょ。でも本当に美味しいわね」


無事に完成して良かった。

それもこれもさくらがつきっきりで沙斗子の面倒を見たおかげだ。

心の中でさくらにお礼を言う。


「あー、美味しかった」


「うん!今度家でも作ってみるよ」


「田無にも食べさせてあげなよ」


「1人でも上手くできるようになったらね」


さすがにまだ1人で作るのは不安なのだろうか。

それでもいつか田無君に食べさせてあげられる日がくるといいな。


最後にお皿を洗って片付けて今日の部活は完了。

せっかくだから私も家で作ってみようかな。

それで家族に振る舞えたら喜んでもらえるだろうか。


3人でのんびりおしゃべりをしながら家路につく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る