ぼくはぼくにできることをしたい

「サクラと遊園地に行くことになった」


「は?なにそれ、デート?」


「まあ…デートだな」


トウヤが前のめり気味に食いついてくる。

そんなに食いつくような話でもないだろうに。


「いいなー羨ましい。俺もこんどショウコと遊園地行ってみようかな」


「いいんじゃないの。でさ、俺遊園地って言ったことないんだよね。

なにしたらいいの?」


「は?サトリ遊園地行ったことないの?」


ぽかんとした顔でトウヤが俺を見つめている。

なんだよ、悪かったな。

うちは両親共働きだ。そのため休日は両親揃って昼過ぎまで寝ていることが多い。

よって家族でどこかに出かけるというと夕飯を食べに行くくらいしかしたことがないのだ。


「ないよ。そういう家族でもなかったし」


「遊園地なー。でもミズクチは遊園地行ったことあるんだろ?だったら任せちまえばいいんじゃねえの?」


「あんまり任せっきりも悪いかと思って」


「どうだろうな。別にいつも任せっきりってわけじゃねえんだし、たまにはそういうときがあってもいいと思うけどな」


「サクラがいいならいいんだけどさ」


「そればっかりはミズクチに聞いてみねえと分かんねえよ」


そりゃそうか。

こんなところでトウヤに聞いたところでわかるはずもない。

でもサクラはかなり楽しみにしてるみたいだったから、俺がお荷物になって迷惑はかけたくないんだ。


「そんなに気になるならさ、事前にガイドブックでも読んでいけば?」


「ガイドブックか。その手があったな」


それはたしかに良さそうだ。

サクラと行く予定の遊園地はかなりの規模だから、専用のガイドブックも本屋にあるだろう。

今まであまり興味がなかったから見てこなかったが、これを期に読んでみるのもいいかもしれない。


「サトリは鈍いくせに気にしいなんだよなー」


「なんだよ、急に」


「どうせミズクチが張り切ってるから自分がお荷物になりたくないとか考えてるんだろ?

そんなこと気にしなくたって、ミズクチはサトリと出かけられりゃあそれだけで喜ぶと思うんだけど」


相変わらず鋭い奴だ。

そんなに直球でこられたら、何て返していいかわからなくなる。


「……そうかもしれないけどさ。できることはしておきたいんだよ」


「まじめだねえ」


「いいじゃん、何もしないよりはさ。俺だってサクラに楽しんでほしいんだよ」


「それだけ思ってりゃミズクチも喜ぶだろ」


「だと…いいんだけどな」


「ま、サトリはサトリにできることをしろよ」


「うん、そうする。帰りにガイドブック買って帰る」


トウヤがにまっと笑う。

どうせ今日の帰りは一人で帰る予定だったし丁度いいだろ。

俺は俺なりにサクラが喜んでくれることをしよう。


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