記念すべき初めての

タダシとミカヅキ、サトリとミズクチはそれぞれデートをしたらしい。

羨ましい話だ。

俺もショウコとデートしたいな。

よし、決めた。

今日の帰りに誘ってみよう。


部活後、ショウコと自転車の2人乗りをしながら帰る。


「なあ、ショウコ、今度の日曜日って暇?」


「暇だよ。どうしたのトウヤ君、なにかあるの?」


「いやー、その…もしショウコさえよかったらデートとかしたいなって」


恥ずかしくてショウコの顔が見れない。

自転車でよかった。

俺の真っ赤な顔を見られなくて済む。


「うん、いいよ!そういえば私たちデートってしたことなかったね」


「マジで?いいの?やった、嬉しい」


「そんなに喜ばれるとなんだか恥ずかしいな。でもいいよ。私もデートってしてみたかったし」


「どこ行こうか」


「うーん、駅前のショッピングセンターは?」


「じゃあそこにしよう。11時に駅前待ち合わせでいい?」


「オッケー、11時ね。楽しみにしてる」


「俺も!超楽しみ」


こうして俺とショウコの初デートが決定した。

やばいな、嬉しすぎて顔がめっちゃにやけてる。



「聞いてくれ、サトリ」


翌朝、さっそくサトリに報告に行く。

なのにサトリは微妙に面倒臭そうな顔をしやがる。


「…またササイ先輩の話か?」


「なんだよ、鋭いな」


「で、なに」


「実はなー、今度の日曜日にデートすることが決定した。

記念すべき初デートだぜ!?いやー楽しみすぎる」


サトリは呆れたように息を吐いた。

なんだよ、もっと喜べよ。


「そりゃ良かったな。どこ行くの?」


「駅前のショッピングセンター」


「いかにもデートって感じだな」


「サトリはミズクチとのデート、図書館だっけ?色気がねえな」


「いいだろ、別にあれはデートっていうかただ2人で出かけただけだし」


少し拗ねたような顔をするサトリ。

あれ以来ミズクチとは出かけてないのだろうか?


「ミズクチとどっか言ったりしてねえの?」


「何度か出かけてるけど毎回図書館だな」


「本当に色気がねえな。たまには映画館とかショッピングセンターとか行ってみろよ。

ミズクチ喜ぶぞきっと」


「サクラからどこか行きたいとか言わないんだよな。

でも、そうだな。たまには違うとこ行ってみるか」


…たまにはってことはそんなにしょっちゅうミズクチとデートしてたのか?

気づかなかった…。

羨ましすぎる。


「そうしろそうしろ。そんでミズクチの行きたいところとかも聞いてやれ」


「そうするわ」



そして日曜日。念願のデートだ。

なに着ていけばいいんだ?変な格好してショウコに引かれたくない。


「とりあえずジーパンと…普通にTシャツと上着でいいのか…?」


一応自分では無難な恰好のつもりだ。

ショウコはどんな格好なんだろ。きっとなに着てても可愛いんだろうな。

急いで準備して駅へと向かう。

まだショウコは来ていなかった。ていうか俺が早く来すぎた。

まだ待ち合わせまで30分もある。


「まだかな、まだかなー」


そわそわと携帯をいじりながら待つこと30分。


「トウヤ君、お待たせ!」


ショウコがやってきた。

ショウコはミニのジーンズスカートにレギンスとパンプス。

上はTシャツにカーディガンを羽織っている。


正直に言おう。

かわいい。かわいすぎる。


「そんなに待ってないよ。ショウコの普段着初めて見たけどかわいいなー」


「そ、そうかな。変じゃない?」


「変じゃないです!超可愛いです!」


「ありがとう、トウヤ君もかっこいいよ」


「ありがと、じゃ、行こうか」


これ以上この応酬を続けるのも気恥ずかしいので、話を切り上げてショッピングセンターへと向かう。

どうしよう、手とかつないだ方がいいのかな。

もう嬉しすぎるのと恥ずかしすぎるのとで何も考えられない。


ショッピングセンターについて、ショウコとぶらぶらウィンドウショッピングを楽しむ。

服屋でショウコが「これどう?」なんて聞いてくる姿がかわいくて、ついついどれもかわいいよ、としか応えられない。

ショウコは「トウヤ君はそればっかり」とふくれているがその姿すらかわいくて仕方ないです。


しばらくぶらついた後、お昼ご飯を食べにファミレスに入る。


「トウヤ君、これ美味しいよ。一口食べる?」


「いいの?じゃあ俺のもどうぞ」


ああ、なんか恋人っぽい。

俺はきっと最高ににやけていただろう。

そんな俺を見て微笑むショウコに思わず見とれる。

2人で見つめあっちゃって、2人でクスクスと笑う。

そんな些細なことがこんなにも幸せだと思わなかった。


午後ものんびりウィンドウショッピングを楽しんで、気がついたら17時になっていた。


「ショウコ、時間は大丈夫?」


「あー、もう17時なんだね。そろそろ切り上げる?」


「そうしよっか」


そう言ってショウコの手を取り駅まで歩く。

恥ずかしくてショウコの顔が見られない。

ショウコは今どんな顔をしているだろうか。


「今日は楽しかったよ。ありがとうねトウヤ君」


「俺も楽しかったよ。あの…よかったらまた誘ってもいい?」


「もちろん、今度は私から誘うよ」


「じゃあ楽しみにしてる」


「うん、それじゃ、また明日、部活で」


「うん、気を付けて帰ってね」


ひらひらと手を振り改札を抜けていくショウコを見送った。

ショウコが見えなくなってからこっそりとガッツポーズをする。


よし、今日は成功だった!

俺はついに初デートを攻略してやりました!

神様ありがとう!

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