なんでもない日
「男だらけの勉強大会開幕ー」
「なに言ってんだケイスケ」
放課後の図書室。
今日はトウヤとケイスケと俺の3人で勉強をしていた。
アサカとサクラは部活で、タダシはジカヅキと早々に帰っていったためこのメンバーだ。
珍しくケイスケが一緒なのは暇だからと言ってついてきただけだ。
「なあ、トウヤ、サトリ、なんで男だけなの?もっと花はないの?」
「さっきも言っただろ。アサカとミズクチは部活。ミカヅキはタダシと帰ったんだよ」
トウヤが呆れたように答える。
俺はと言えば完全に無視して勉強している。
「お前ら他に女子の友達いないわけ?」
「ケイスケはどうなんだよ。不満ならお前が女友達を呼んだらいいだろうが」
「女友達なんていたらお前らとここで勉強なんかしてねえよ!」
「じゃあ文句言うな。黙って勉強しろ」
「トウヤってそんなにまじめだっけ?」
ケイスケはぶつくさ言いながらも教科書を開く。
だいたいアサカとサクラ、ミカヅキがいたところでアサカは恋愛に興味ないしミカヅキはタダシの彼女だ。
サクラだって俺の彼女未満なわけで、ケイスケが期待するようなことにはならないだろう。
それでも女子にいてほしいと思うのはケイスケが健全なる男子高校生だからだろうか。
「そいやさ、トウヤはなんでいるの?」
「いちゃ悪いかよ」
「そうじゃなくて。部活は?」
「今日は顧問が出張だから休み」
「へー」
「ケイスケ…お前全然興味ないだろ」
「ばれた?教科書開くと眠くなるんだよ」
「お前本当に帰れよ」
トウヤはそろそろケイスケの相手をするのが面倒になってきたのだろう。
あしらい方が雑になってきている。
しかし本当になんでケイスケはここにいるんだ。
帰って好きなことでもしてればいいのに。
「サトリまでウザそうな顔するなよ。俺だって傷つくんだぞ」
「そんな顔してたか?」
「してた。「ケイスケはさっさと帰ればいいのに」って顔してた」
「ケイスケは変なところで鋭いよな」
「サトリがわかりやすいんだよ」
そう言って再び教科書に目を向けるケイスケ。
最初から黙ってそうしててくれればいいんだよ。
その後1時間ほど黙々と勉強を続ける。
最初はうるさかったケイスケだが、静かにしているので勉強に集中し始めたのだろう。
いいことだ。
「なあサトリ」
「なんだよ」
トウヤがふと話しかけてくる。
「ケイスケのやつ完全に寝てるんだけど」
「は?」
見ると確かにケイスケは爆睡していた。
教科書を見ると眠くなるというのは本当らしい。
しょうがない奴だな。
「顔に落書きとかしていいかな」
「やめとけよ。後でうるさいぞ。ほっといたらその内起きるだろ」
「ケイスケは結局何しにここに来たんだろ」
「暇だからだろ」
「サトリははっきり言うよな。まあ、そうなんだろうけど」
「それよりトウヤ、古典のここがわかんないんだけどわかる?」
寝ているケイスケをまたも完全に無視して勉強を続けることにする。
眠い奴は寝かせておくのが一番だろう。
結局その後ケイスケは勉強が終わって帰るときまで起きなかった。
放置して帰っても良かったが、きっと後日文句を言われるのは目に見えているので仕方なく起こす。
「おい、ケイスケ、起きろ。帰るぞ」
「あと5分…」
「置いてくぞマジで」
「んーなんだよ…。って、やべー、俺完全に寝てた!」
「なんだかんだ3時間くらい寝てたぞお前」
「マジかよ、もっと早く起こせよ」
「あまりに気持ちよさそうに寝てたから起こせなかったんだよ」
「ケイスケ、さっさと帰る支度をしろ。置いてくぞ」
「なんだよ、サトリ。ちょっと待てよ。……よし、帰ろう!」
準備を終えたケイスケを連れて図書室から出る。
外はもう薄暗くなり始めていた。
「俺こんなに集中して勉強したの久しぶりだわ」
トウヤがこりをほぐすように肩をぐりぐりと回す。
たしかにトウヤは普段家でしか勉強しないから図書室でがっつり勉強…というのは珍しい。
ケイスケはいまだ欠伸をしている。
あれだけ寝といてまだ眠いのかお前は。
「じゃー、俺こっちだからまた明日な」
ひらひらと手を振ってケイスケと別れた。
あの様子じゃ帰ってまた寝るんだろうな。
俺までつられて欠伸が出そうだ。
トウヤと2人で雑談をしながら家路を急いだ。
俺も帰ったら食事の準備だけして寝よう。
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