まぶしい笑顔
「トウヤ、お前姉貴と付き合いだしたんだって?」
ある日の昼休み、俺とトウヤ、タダシ、ケイスケの4人でお昼を食べているとケイスケが思い出したように口を開いた。
その言葉を聞いてタダシが硬直している。
「は?マジで?トウヤと?ササイ先輩が?マジで?」
「タダシ、驚きすぎだろ」
「サトリはなんでそんなに冷静なんだよ!」
「俺は付き合いだした翌日に朝一で聞かされてたから」
「俺にも教えろよ!」
「で、トウヤ、マジなの?」
それまで騒がしいタダシに苦笑していたトウヤがケイスケの方を見てにかっと笑った。
トウヤは本当は言いたくて仕方なかったんだな。
「おう、マジだよ。俺、ササイ先輩と付き合いだした。
だからケイスケ、俺のこと義兄さんと呼べよ」
「呼ぶかバカ」
「なんでだよー、いずれはそうなるかもしれねえんだぞ」
「万が一そうなっても俺はトウヤのことはトウヤと呼び続けるよ」
そりゃそうだな。ケイスケがトウヤを義兄さんと呼ぶことなど永遠におとずれないだろう。
ていうかそういう場面が気持ち悪い。
「いやー、俺もなー、ついにササイ先輩と付き合いだしたんだよ。
紆余曲折あったけどやっとだぜ」
「これで俺もトウヤのササイ先輩語りから解放されるのかと思うと安心だ」
「サトリは甘いな。それくらいでトウヤがササイ先輩について語るのをやめるわけねえだろ。
むしろ悪化すると俺は思うぞ」
「なんだよ、タダシ。少しは現実逃避させてくれよ」
「トウヤ…どんだけ姉貴のことサトリに語ってたんだよ」
ケイスケが呆れたような顔で弁当を突いている。
しかしトウヤはそんなこと気にするでもなく満面の笑みのままだ。
「だって俺、ササイ先輩のこと大好きだからさ、言いたいこといっぱいあるんだよ」
「そりゃそうかもしれないけどさ。俺だってサトコについて延々語りたいし」
「勘弁してくれ」
「しっかしなー」
「どうした、ケイスケ」
「いやさ、トウヤもついに彼女もちだろ?タダシにはミカヅキがいるし…これで彼女なしは俺とサトリだけか…
なんかおいて行かれた気分だ」
ケイスケは大きくため息をつく。
だが、ケイスケには悪いが俺にはサクラがいるのだ。
「残念だな、ケイスケ。サトリにはミズクチがいるぞ」
「は?なに言ってんだよトウヤ。サトリって彼女いたの!?」
「まだ付き合ってないから彼女じゃないよ。いつかは付き合うつもりだけど」
「マジで?マジなのか!?じゃあ本当に独り者は俺だけ…この裏切り者ども…」
がっくりとケイスケは肩を落とす。
そういやケイスケについては浮いた噂とか聞いたことないよな…。
そりゃそうか、俺友達こいつら以外いないもんな。あとサクラとアサカとミカヅキか?
でもサクラとアサカはケイスケとそんなに親しくないし、ミカヅキはケイスケの従兄妹だけどそんなにぺらぺら噂話するタイプでもないしな。
「まあ、この俺に彼女予定ができたんだ。ケイスケにもその内いい女の子が現れるって」
そう言って軽くケイスケの肩を叩く。
そうしたらケイスケに睨まれた。
「なんだよ」
「あのなー、サトリやトウヤと一緒にすんなよな、この2年のモテ男コンビめ!
お前ら陰でどんだけ自分たちがモテてるか知らねえからそういうこと言えるんだよ!」
「やめとけよ、ケイスケ。モテない男のひがみはみっともないぞ」
「タダシ…彼女いるからって余裕ぶっこきやがって」
「そういうんじゃねえよ。少し落ち着け。お前の姉ちゃんに彼氏ができたんだ。
その弟のお前にだってチャンスはあるさ」
「あるかなあ」
「あるって」
「でも姉貴も結構モテるだろ?」
「いやまあ、そうなんだけどさ」
「なんで俺だけこんなにモテないんだ?顔?顔がいけないの?」
と、ケイスケはぼやいているが別にケイスケは顔は悪くない。
ササイ先輩とよく似ていて整った顔立ちをしている。
性格だって普段はさっぱりしていて明るい良い性格をしていると思う。
…今はこんなだけど。
「逆にさ、ケイスケはどんな女子が好みなわけ?」
トウヤがお弁当を突きながら尋ねる。
「俺の好みか。んー、可愛くて性格がいい子」
「ざっくりしすぎだろ」
「そうか?これに尽きると思うんだけど」
「もうちょっと掘り下げろよ。顔が可愛いつったっていろいろあるだろうが」
「サトコのことは可愛いと思うぞ」
「な、ケイスケ、お前サトコに気があるのか!?」
「落ち着け、タダシ。ただの例えだっての」
「紛らわしいこというなよな」
「顔の好みはミカヅキか…。じゃあ性格は?大人しいとか、活発とかあるだろ」
「大人しいか活発かで言えば活発な子の方がいいかな。あー、あとな、料理ができる子が良い。
俺料理苦手なんだ」
「活発で料理ができる子…」
サクラがどんぴしゃだな。譲る気はさらさらないが。
アサカはどうだろう?活発…ってほどではないが大人しいわけでもない。
顔も普通にどこにでもいる可愛い子だ。
でも恋愛感情ないからな。ケイスケにぐいぐい来られたら、アサカはドン引いてしまうだろう。
「まあ、ケイスケにもそのうちいい子が現れるって」
「なんだよ、サトリ。勝手に締めくくるなよ」
「そろそろ昼休み終わるぞ」
「わ、マジか。俺弁当半分しか食ってねえし」
慌ててケイスケが弁当を掻きこむ。
ようやくケイスケが食べ終えたころ、予鈴が鳴り、昼休みは終了となった。
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