その感情の答えは
サクラに「付き合うことを前提に友達を続けてほしい」と言った翌日。
俺とトウヤは屋上で昼食をとっていた。
ちなみにタダシはケイスケと食べると言って不在だ。
「で?サトリ、昨日ミズクチとはどういう話になったわけ?」
「いつか付き合うことを前提に友達でいてほしいって言った」
「ふうん、やっぱり友達のままなんだな…って、「付き合うことを前提に」?」
「うんそう。いつか付き合うことになると思う」
「え?マジで?なんでそんな話になったの?」
「トウヤ、ご飯こぼしてる。汚いな」
トウヤは余程驚いたのかむせ返ってご飯を噴出した。
なんだいったい、汚いな。
「汚いとかいうんじゃねえよ、こっちは驚きでそれどころじゃねえんだよ。どういうことだ」
「そのまんまだよ。
いつか、俺はサクラと付き合うことになる。そういう前提で今は友達のままでいよう、って話」
「なんで今すぐ付き合わねえんだよ」
「だってまだサクラに恋愛感情ないし」
「ならなんでいつか付き合うってことになるんだ?」
「サクラ以外の女子に興味持てないから」
「マジか。マジなのか」
「マジだよ」
もそもそと弁当を食べ続ける。
トウヤも少し落ち着いたのか弁当を食べるのを再開した。
「そういやサトリ、お前いつの間にミズクチのこと名前で呼ぶようになったんだ?」
「昨日の放課後から。サクラから下の名前で呼んでもいいかって聞かれたから、俺もそうすることにした」
「はー、なんでお前ら付き合ってねえんだろうな」
感心したような呆れたようなため息をトウヤが吐く。
なんでってそりゃ、俺がまだサクラのこと好きじゃないからだよ。
もちろん嫌いじゃないし友達としては好きだ。
恋愛感情が追い付いていないだけなんだと思う。
現にサクラの笑顔を見てドキドキしたりはするわけだし。
「トウヤこそササイ先輩と付き合ってない意味がわからない。あれだけ仲良いのに」
「うるせえな、振られっぱなしだって言ってるだろ?」
「そろそろもう一度告白してみてもいいと思うんだけどな」
「だってまた振られたら怖いし」
そんなことにはならないと思うけどな。
先日のササイ先輩の様子からすれば、今トウヤが告白したら100%うまくいくと思う。
でもそのことを俺の口から言ってもいいのかはわからないので黙っておく。
だいたいそんなことを聞き出したことがトウヤにばれたらそれはそれで面倒だし。
「トウヤも意外と臆病だよな」
「人間、恋をしたら誰でも臆病になるんだよ」
「そういうもん?」
「そういうもん」
その気持ちはわかるような、わからないような。
もし俺がサクラに付き合うことを前提に友達でいてほしいって言って、でもサクラから断られたらそれなりにショックを受けるだろう。
それを恐れる気持ちと同じだろうか。
「わかるような…わからないような…」
「ま、サトリにもその内わかるようになるさ」
「そうだな。いずれは…わかるようになるといいな」
「お、珍しく前向きじゃん」
「そうか?」
「そうそう。サトリってそういう気持ちはわからなくても死なないし!みたいな態度でいることが多いだろ」
「そう…か」
なんかスカしてるみたいで感じ悪いな俺。
「それがサトリのいいとこでもあるけどさあ?
そうやって素直に知らないこと知ろうとするのもいいとこだよな」
「そりゃ、どうも」
「そういやサトリってミズクチのどこが好きなの?」
「は?なんだよいきなり」
「いいじゃん、教えろよ」
「俺がサクラの好きなところ…」
なんだろう。だいたいまだ好きじゃないんだけど。
まあ、いいか気になるところ…でもいいんだよな?
「笑顔がかわいい」
「あー、たしかに女の子の笑顔ってかわいいよな。でもそれならミズクチじゃなくても良くね?」
「いや、サクラじゃなきゃダメだ。あとは料理が美味いところとか?
姉御肌のわりに甘えん坊なところとか…あとはなんだろうな」
「いやーごちそうさまでした」
「言っておくけど、トウヤのササイ先輩語りの半分も言ってないからな」
「う、それは悪かったよ」
「トウヤ、下手すると昼休みいっぱいササイ先輩について語ってる時あるからな」
「それぐらい愛してるんだよ」
「はいはい、ごちそうさま」
ここで調子に乗せるとまたササイ先輩語りが始まりそうなので適当に流す。
俺、トウヤの扱い上手くなってるよな。
そうこうしている内に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ったので弁当箱を片付けて教室へと戻る。
教室に入ったサクラと目が合ったので手を振ったら振り返してくれた。
こういうのが恋人のすることなのかな。
今日は放課後に調理部に顔を出す日だ。
メニューはたしかオムライスだ。楽しみだなあ。
わずかに頬を緩めて、授業の準備をする。
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