関係性が変わっていく
放課後、アサカとミズクチと図書室に向かう。
ミズクチはいつもどおりにしゃべっていて変なところなんて見受けられない。
やはり昨日トウヤが言ってた「ミズクチはサトリのこと好きなんだよ」はトウヤの思い過ごしではないだろうか。
気がついてみれば別に2人きりでもなんでもなく、普通にアサカいるし。
図書室につき、適当に座って勉強を始める。
アサカは一人黙々と。俺はミズクチにミズクチが苦手らしい数学を教えている。
苦手と言いつつも基礎はわかっているようでちょっとヒントを与えればすんなりと問題を解いていく。
「オイガセって勉強教えるのうまいよね」
「そう?いつもトウヤに教えてるからかな」
「うん、すごいわかりやすい」
「それなら良かった」
「あ、ここの問題なんだけど…」
「どれ?」
「ちょっと本探してくるわ」
俺とミズクチが数学の問題で盛り上がっているとアサカが席を立って本棚の方へ行ってしまった。
2人だけで盛り上がりすぎたかな?
まあ、気のいいアサカのことだ。そこまで気にしちゃいないだろう。
それにしてもこれはチャンスかもしれない。
昨日トウヤが言っていたことが本当かどうかミズクチに確認しておきたい。
トウヤの気のせいだったらそれでいいんだ。
「ミズクチは俺のこと好きなの?」
ストレートに聞いてみるとミズクチは困惑したように口を開いた。
「え…なに、いきなり…」
「トウヤがそんなこと言ってたから。勘違いだったらゴメン。図々しいよな」
本当に図々しいよな。誰かが、俺のこと好きかなんて。
「勘違いなんかじゃ…ないよ」
ミズクチがごくりと唾をのむ音が聞こえるようだった。
は?今なんて言った?
「私は、オイガセのこと、好き、だよ」
「ミズクチ…俺…」
何て言っていいかわからない。
トウヤの言っていたことは当たってたんだ。
ミズクチが俺のこと好き?
で、俺はそれに対してどうすればいいんだ?
「あ、でもいいの!いきなり付き合ってくれとかそういうこと言うつもりじゃなくて!
ただその…友達として、仲よくしてほしい」
「ミズクチ。俺、はっきり言って恋とか愛とかそう言う気持ちわかんないんだ。
だから今は誰とも付き合う気なんてない。
それでもいいの?ミズクチは俺と一緒にいてつらくならないの?」
ここは思ってることを素直に言う。
これは相手がミズクチだろうと他の誰であろうと関係ない。
でも、ミズクチにとってはつらい事なんじゃないだろうか。
「つらくなんてないよ。
その、恋とか愛とかに興味ないっていうのはユリイもそうだからなんとなく気持ちわかる。
オイガセが誰かと付き合う気が無いっていうのは逆に他の女の子に取られちゃう心配がないから嬉しい…なんて」
「このままずっとミズクチのこと好きにならなくても?」
「それは、たしかに嫌だけど…。でも今は一緒にいられるだけで嬉しいかな」
「本当にそれでいいの?」
それで、いいのだろうか。
俺はひどくミズクチを傷つけてしまってはいないだろうか。
「うん。いいよ。友達に…なってほしい」
「それなら俺は構わないよ。別にミズクチのこと嫌いじゃないし。
それにもう友達だろ?少なくとも俺はそう思ってたんだけど」
「友達って言ってくれるの?」
「え?違った?」
マジで?俺の勘違い?友達ですらなかったのだろうか。
ちょっとショックを受ける。
「ううん、そんなことない!友達!友達だよ!」
「なら良かった。それじゃ、これからもよろしく」
「うん!あ、あのメアド、教えてもらってもいい?」
「ああ、いいよ。はい」
「ありがと、メールとかしてもいいかな」
「いいからメアド教えるんだろ?」
「そ、そうだよね。あはは、ありがと」
ミズクチはにこっと笑って俺のメアドをスマホに打ち込んでいく。
せっかくなので俺もミズクチのメアドを教えてもらった。
俺の数少ないアドレス帳がわずかに増えて嬉しかった。
しばらくするとアサカが戻ってきた。
もしかしたらアサカはミズクチに気を使って席を外していたのかもしれない。
アサカはそう言う奴だ。
その後しばらく勉強して暗くなる前にアサカとミズクチは帰っていった。
俺もトウヤと合流して早く帰ろう。
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