友達

「トウヤー、昼飯…」


昼休み、サトリはいつもどおりトウヤと弁当を食べようと声をかけようとした。

しかしその声は途中で途切れた。


トウヤが複数のクラスメイトらに囲まれて雑談していたからだ。

サトリは同世代の集団が苦手だ。

どう対応していいかわからない。

おたおたしているとトウヤが気が付いて声をかけてきた。


「サトリ!何きょどってんだよ?」


「いや、昼飯どうしよっかなって…」


「そっか、じゃあたまにはみんなで一緒に食べるか」


激しく拒絶したかったが、周りのクラスメイトの期待の眼差しと

満面の笑顔のトウヤを前に、サトリに拒否権などなかった。


「サトリ君とトウヤってさー普段何話してるの?」


女子が話しかけてくる。

以前図書室でサトリをストーキングしていた内の一人だ。


「何ってなあ」


トウヤがサトリに水を向ける。


「宇宙人の話とか。何できてるかとか。ササイせ…うぐう」

とっさにサトリの口をトウヤにふさがれた。


「何すんだよ」


「サトリこそ何言い出すんだよ!!」


「いや、トウヤとの会話で一番印象に残ってるのってそれかなって」


二人がぎゃあぎゃあ騒いでいるのを周りのクラスメイトたちは温かく見守る。


「なにそれ、なんの話ー?」


先ほどとは別の女子が口をはさむ。


「何でもねーよ。大した話なんかしてないって。毎日くだらない雑談ばっかだよ」


トウヤは適当にごまかす。

サトリが言おうとした内容を察した何人かがニヤニヤしている。

1人じゃなくて。

2人でもなくて。

大勢でご飯を一緒に食べるとにぎやかなんだな。

サトリは何かを発見したような気持ちになった。


「サトリ!何悟ったような顔してんだよ」


クラスメイトに声をかけられて、サトリは我に返る。


「あのさ、トウヤにもよく「悟ったような顔してる」って言われるんだけど

俺、そんな顔してる?てか悟ったような顔って何?」


サトリは困惑して聞き返す。


「してる、してる」


「なんて言うかさー仏様みたいな顔してる」


「そうそう!アルカイックスマイルだっけ?

それで遠く見てる」


「名前がサトリだけに悟ってるって、つい言いたくなるんだよね」


「わかるー!くだらないこと言ってるなあって自分でわかるんだけどね」


クラスメイトはせきを切ったようにサトリに話し出した。

サトリは自分が言い出したこととはいえ、いきなりまくしたてられてびっくりする。

そんなサトリを見てトウヤはニヤニヤしている。


「そ、そっか。俺、そんな顔してたんだ…」


「そうそう、サトリはそんな顔してるよ。

だからみんな話しかけづらかったの」


トウヤは固まってしまったサトリにフォローを入れる。


「そうなの?なんかゴメン」


「謝んなって」


「そうそう、みんなサトリ君がどんな人か知りたかったんだからさ」


「トウヤずるいぞ、こんな面白い奴独り占めして」


おたおたするサトリにクラスメイトが笑いかける。


「してねーよ。おまえらが勝手に敬遠してただけだろ。

サトリが友達できないって泣いてたぞ」


「泣いてないから」


こうやって友達って作るんだな。

友達がたくさんできるって楽しいことなのかもしれない。

新しい発見にサトリは思わずニヤニヤしていた。



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