第2話 初めての仕事

その日僕は嬉しくて、母親に電話をかけた。

「もしもしお袋、俺とうとう就職決まったよ!」

「あら、良かったじゃない。頑張って辞めないで仕事しなさいよ。ところで、なんの仕事なの?」

「正義の味方クラブだよ。ヒーローになれるんだ。ヒーローになって住んでる町の平和を守るんだ。」

「そんな会社ほんとにあるの?夢でも見てるんじゃない?」

「あるよ。封筒がポストに入っていたんだ。」

「頑張って働きなさいよ。」

「ところで、そっちは元気にやってる?」

僕の両親は僕が住んでいる町の隣の隣の町で結構田舎だ。

「実は、お父さんが出掛けてくると行ったきり帰って来ないの。もう3日になるのに…。大丈夫かしら…。」

僕のお父さんはサラリーマンだけど、出張が多くて、一週間帰って来なかったことも少なくなかった。

「また、会社の出張でしょ。」

「電話も繋がらないし、会社に行ってくるとも言ってないし、出張だったら前もって言うはずだけど、それが無かったから心配で…。」

「まぁそのうち帰ってくるよ。」

「じゃあ明日から働くからまたいつかね。」

「あまり働きすぎないでね。」

翌日SMクラブへ行った。町田さんがいた。

「おはよう。今日からだね。頑張って!」

「おはようございます。はい!頑張ります!」

「ところで、いつになったら行けばいいんですか?敵なんて見たことないですよ。」

「そういうときにピョンがいるんじゃないか、敵が出現すると、ピョンが君のところにやって来て、敵がいる場所に連れていってくれるから。」

「とか言ってたら早速仕事のようだ。頑張ってくれよ。」

「海飛!敵が現れたよ。僕に触って。」

「うん。」

ピョンに触れた瞬間ワープした。目の前には敵がいる。

「俺は、怪人タイチだ!お前を倒してやる!」

「助けて!」と怪人に捕まっている女性が叫んでいる。

「先に聞くけど、この怪人に負けたらどうなるの?」

「大丈夫!負けても特に何も無い。ただ給料はちょっと減るかもね。」

「それは嫌だ!」

「海飛!変身だ!」

「どうすんだよ。どうやって変身するの?」

「言い忘れてたね。これを両目に当てて変身って言うと変身出来るよ。」

ピョンから黒く四角い物体を2つ渡された。急いでいた僕はそれが何なのかを聞かず変身した

「変身!」僕に光が差し込み、気がついた時には、変身していた。仮面ライダーのように仮面を被りヒーローっぽい服を着ていた。憧れだったヒーローになれて嬉しかった。そんな余韻に浸っている暇はない。

「さぁ戦って!君は今普段の何倍ものパワーを出せるから大丈夫!」

「よし、そりゃ!」

「喰らえ、タイチビーム!」

「どうするの?」

「かわして!」

「今だ!くらえ!」

パンチが炸裂し敵は倒れた。

「良かった倒せた!」

「ありがとうございます。」

敵に捕まっていた女性はお礼を言うと、どこかに去って行った。

「おめでとう、敵はいつ現れるか分からないからできるだけ準備はしておいてね。」

僕はピョンに気になっていたあの質問をぶつけた。

「ところで、この黒いやつは何なの?」

「それがないと変身出来ないんだよ。このクラブで働いている人はみんなちゃんと別の仕事をしていて、その職業に関係するもので僕らが変身グッズを創るんだ。」

「例えば?」

「お坊さんだったら数珠とか、会計士だったら電卓とか、そういうもので創るんだ。」

お坊さんがこの仕事をしていていいのだろうか?という疑問が湧いてきたが、あえてつっこまないようにした。

「そして君は何も他に仕事はしてないだろ?」

「あぁ、ニートだ。何で僕は黒い物体2つなんだよ?」

「それは濁点だよ。ニートに濁点をつければニードになるだろ?つまり必要とされる人になるわけ。だから黒い物体2つなんだよ。」

考えた人のセンスに感動しながら、会社に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る