第22話 出世の近道
帝国海軍には、最充実配置と呼ばれる出世最短コースの配置が存在した。まずは、海軍兵学校を卒業している一号生徒。その中でも伍長が良い。一号生徒とは、一番成績の優秀な人物の事を指す。海軍兵学校の生徒とは言え、立派な帝国海軍軍人である。だから、伍長の一号生徒でなければ最良とは言えない。艦に乗れば旗艦の航海士。旗艦とは、連合艦隊の司令部及び人材がいる。言うなれば、連合艦隊の心臓部である。「大和」や「武蔵」のような大型艦にある場合もあるし、旗艦の艦種は時代によりけりであった。それから大艦のケプガン。以前紹介したケプガンである。ケプガンになる事も、海軍軍人としては最良の配置であった。大艦でなければならない事は、言うまでもない。人数の少ない小艦よりは、明らかに大艦の方が評価は高い。だからといって小艦配置を嘆く事もない。駆逐艦の先任将校も、最良の配置とされていたからだ。当時の駆逐艦と言えば、その代名詞は「ブリキ缶」といわれる程、装甲の薄い小艦もよいところである。換えなどいくらでも利いた使い捨ての駆逐艦もあったが、実戦における駆逐艦の活躍は、大艦よりもはるかに目覚ましく、駆逐艦の艦長も、最良の配置であった。これらいずれの配置もが、自身が置かれた立場では一番の権限が認められているポジションである。間違ってはいけないのは、権限が認められているという意味において最良の配置という事であり、これらの配置にいれば出世間違いなしとか、戦死率が低いという事ではない。例えば、駆逐艦の艦長や駆逐艦の先任将校などは、帝国海軍における最も戦死率の高いポジションであったし、大艦のケプガンや旗艦の航海士も、楽な配置ではなかった。むしろ、並の士官では勤まらないくらいである。出世をするなら苦労をしろという事でもある。
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