第19話 艦船運用方法

 簡単に艦隊運用や、艦船を動かすと言っても、事はそう簡単な問題ではない。様々なデータを正確に読み取り、analyze(分析)し、見極める必要がある。それだけではなく、広大な海洋で自艦の位置を把握出来なければ、それは自殺行為に等しい。日本海軍は、艦位測定方法を二種類保有していた。陸岸に近い航海の場合は、陸測を行う。陸上に定めた2つないし3つの目標から、方位線を羅針儀上にとり、海図上にこの交点を求めると、それが現在の艦位という事になる。しかしながら、広大な海洋においては、陸岸から離れた場所に艦位があり、この方法ではまだ充分ではない。そこで役に立つのが、天体観測(天測)という方法である。これは、六分儀によって天体(太陽や星)の高度を算出する。さらに別の方位線を求めて算出された交点が、艦位となる。ただ、空が厚い雲に覆われている時は、無理である。この二種類の方法を用いて、艦位を特定していた。最も、現在ではGPS(全方位観測システム))や、人工衛星の登場により、そのようなアナログな方法は、全く使う必要がない。自艦の位置を図りながら、目的地に向かう。それは艦船なら当たり前の事である。大和級の巨大戦艦も、駆逐艦や輸送船のような小規模な艦船も同じ事である。当然ながら、自分がどこにいるか分からなければ、目的地にも敵艦隊にも遭遇する事は不可能である。この考え方は、戦略にも同じ事が言える。戦いにおいて、自分が誰とどのように戦い、どのような勝ち方をするかという、ストラテジーがなければ、勝利の栄冠は輝かない。自分の現在地を見失い、実力に見あわない行動をしているようでは、勝てる戦も取りこぼしてしまうだろう。

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