第17話 海軍兵学校入校以来の士官精神

 大日本帝国海軍のトップヒエラルキーである士官は皆一様に海軍兵学校を卒業している。そんな海軍兵学校入校以来の士官精神とやらが、海軍にはあった。「指揮官先頭」「率先垂範」である。当時の最高難易度学府は3つあると言われた。陸軍士官学校と第一高等学校(現在の一橋大学)と海軍兵学校である。これらに合格する事は、大変な栄誉であった。いうなればエリートであり上流階級の証でもある。総じて、戦前は軍人(士官)の地位は高かった。そんな中で、海軍士官を養成する海軍兵学校では、海軍部隊を率いる上で、常に指揮官である自分から行動するのが美徳とされた。口だけでああでもない、こうでもないと言いつけるのは、良き指揮官のする事ではないと。現実の戦いにおいては、そんな悠長な事を言っている余裕は無いときもあるが、基本的には指揮官自らが、危険な場所に先頭で切り込む。そんな美徳を叩き込まれる。「率先垂範」とは、分かりやすく言い換えれば、部下の良き手本となれ。という意味である。人の上に立つならば、率先して人の見本になれという事である。この2つの美徳が、日本海軍の海軍兵学校入校以来の士官精神として、代々受け継がれていく。

 日本海軍士官心得①

 功ハ部下ニユズリ部下ノ過チハ自ラ負フ

 日本海軍士官心得②

 部下ニ努メテ接近シ下情ニ通ゼヨ

 シカシ部下ニ慣レ親シムルハ最モ不可ナリ

 日本海軍士官心得③

 自分ガ出来ナイカラトイッテ部下ヲ矯正シナイノハ良クナイ。部下ノ機嫌ヲトルガ如キハ絶対禁物デアル

 日本海軍士官心得④

 悪イ所ハソノ場デ遠慮ナク叱ッテ正セ。シカシ叱責スル時ハソノ場所ト相手ヲヨク見テヤレ

 日本海軍士官心得⑤

 世ノ中何デモワングラス(一見しただけで)評価シテハイケナイ。

 日本海軍士官標語

「おいあくま」→「怒るな」「威張るな」「焦るな」「腐るな」「負けるな」

「だらり追放」→「ムダ、ムラ、ムリ」をなくす事。

「三惚れ主義」→「仕事、任地、奥さん」に惚れる。などなど、士官教育はそれなりに力をいれていた事が伺える。

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