証明不能な世界で

幕間3

 白みそうで白まない夜空。

夜が明けるその一歩手前の瞬間が、永遠に引き延ばされた空間。

最も世界が暗い瞬間に私たちは存在する。


「誰が存在を決めていると思う?」

ねこうさぎは問う。

「そんなの誰でもない。そこに存在した瞬間から、それは規定される」


 機嫌が悪いのか、長い尻尾でぺちぺちと地面を叩いている。

「見たことがない存在でも?」

「私が見ていなくても、他の人が見てる」

「誰も観測していなかったら?」

言葉が詰まった。


「絶対的な観測者、仮に神といえる存在がいたとしても、その神とやらを認識できなきゃ、観測していないのと同じにゃ」

「我思う――」

「デカルトのあれは、観測者が自分という時点で信ぴょう性がないのん。椅子でくつろいでいると思い込んでる、試験管の中の脳かもしれないよ」

言葉を遮られるのは、正論であってもいい気がしない。


「この世界は夢かもしれないにゃ」

「胡蝶之夢」

うんうんとうなずくねこうさぎ。

「実際、この世界が存在するものだと証明することはできない」

「私たちを認識して、私たちも認識してる全知の神様がいて、それが世界は存在して、私たちは肉体を持っていると証明しない限りはね」


 ありえない仮定。

自分で言ってそう思うぐらいひどい反論だ。

ねこうさぎも全く意に介していないと、顔に出ている。

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