生死の並存
幕間2
「生と死は対局だと思う?」
ねこうさぎは尻尾をたゆたわせて、向かい合う少女に問いかける。
夕日は沈み、帳が覆うこの世界。
お互いの顔は月明りがぼんやりと輪郭が見えるだけ。
さながら無知のベールである。
「うん、だって生者は‘存在’しているから。でも死者は単なる骨や、朽ち落ちた腐肉に過ぎない」
「生者は‘意志’を持っている。死んだとしても、‘遺志’はこの世に残留するよ。生者の世界に死者が存在する確固たる証拠だよ。生死は対局じゃなくて、同じ世界にある、いわば同一の世界線上で起きている現象なんだ」
少女は訝しむ。
「肉体は死んでいるし、そこにないのと同然だよ? 肉体は違う世界、対局にあるんじゃないの?」
「それは形而下の世界の話だよ。形而上の世界では、この世もあの世も同じにゃあ」
ねこうさぎはわかってないなあと言わんばかりに、嫌味ったらしく口角を上げている。
「生は死の恐怖を呼び起こし、死は生を最も強烈に認識させる。それならば、生と死は向かい合った存在だと思うの」
魂の世界では生死は同一の世界の存在し、概念の世界では別の世界にある。
形而下に複数の世界が展開している。
ねこうさぎは満足げにうなずいた。
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