第22話 ボクのチカラとキミのチカラ

ホクトさんが静かに語り始めた。

彼の話では、事故が起きた際、すでにタトゥさんの意識が失われていた。

だから、タトゥさんの意識では、まだ、重傷を負う以前の姿の記憶しかない。

それが、反映されている、ということだった。


「ということは、目を覚まして、今の状態を自覚しちゃったらどうなるの?ヨウちゃん、焼けただれちゃうの?」

わたしもノドカさんと同じことを心配した。

「目を覚まさせないように、鎮静剤を持続的に投与しています、ただ」

「ただ?」

「それよりも、もう、彼の体に寿命が来ている、ということの方が問題なのです」

「・・・・・、もう、助からないんですか?」

「いえ、それはわかりません。とても凄まじい生命力なので。あるいは、回復するかもしれません」

「じゃぁ、助かるの?」

「助かるとしても、このまま鎮静剤をかけ続けているわけにはいかないので、意識が戻ってしまうでしょう」

「じゃ、じゃぁ、一体どうすればいいの?このままだとヨウちゃんが、焼けただれちゃうよう」


「そこで、マミさん。キミの力が必要となるのです」

「え?わたし?」

「はい、キミには、その力があるのです」

「わたしに、どんな力があるっていうの?」

「この入れ換えができるのは、ボクとマミさんだけなのです」

「え?わたしが入れ換える力を持っているの?」

「ええ、自覚はないと思いますが、身に覚えはありませんか?」

「そんなの急に言われたって、心当たりはないわ、これまで幽霊とかも見たことないもの」

「では、シンジ君の姿が変化したとき、キミは何を強く願っていたのでしょうか」

「え?どういう意味ですか?」

「キミは意識していなくとも、無意識の中に強い何かがあったはずです」

「わたし、シンちゃんとのことを、どうしていいかわからなくて迷ってたわ」

「そうです、マミさんの無意識がマミさんの力を利用して具現化したのです」

思い起こせば、あの出来事が無かったら、わたしはシンちゃんのことを見ないように、少しずつ距離をおこうとしていたかも。でもその反面、ちゃんとシンちゃんに向きあわなきゃって思ってた。

「で、でも、実際にシンちゃんとヨウちゃん、っていうかそのタトゥの人が入れ替わっちゃったのは?」

「そう、そこから事態が変わってしまったんです」

「ま、待って、私ぜんぜんわからないわ。これらは全てマミさんが起こした現象ってことなの?」

「いえ、ボクもその能力は持っています。ですが、彼女の能力の方がボクよりも勝ってしまったのが今回、このような結果を招いたのです」

「うーん、なんや、話がややこしいな」

「マミは以前から、勘は鋭い方でしたけど、そんな怪奇現象みたいなことは起きませんでしたよ」

「そうですね、能力を引き出させてしまったのは、偶然かもしれませんが、マミさんがボクのサークルに参加した時からだと推測されますね。そして、そのパワーが強まってきて、ボクのパワーを上回ってしまった」

「だけど、わたしが起こしたことだとして、わたしが無意識に思っていたことはシンちゃんのことだけでしょ、ヨウちゃんやホクトさんやタトゥさんのことなんて、会ったこともないし、無意識とか関係ないような気がするんだけど」


「ねぇ、最初から順序良く話してみましょう、このまま能力のことを延々と語っていても仕方ないわ」

「いいのですか?すべて話してしまっても」

「多分、今、すべきことだと思うわ・・・、私の過去から順を追って話すことになるけど」



わたしはやけに喉が渇いてしまって、まだ口をつけていなかった、冷めた紅茶を飲み干した。


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