第16話 月からの使者

☆登場人物☆


マミ:姫田 真実(ヒメタ マミ)

シンちゃん: 與 真心(アタエ シンジ)

ヨウちゃん: 黒崎 陽(クロサキ アキラ)

マドカ: 堂上 円華 (ドウガミ マドカ)

ノドカ: 堂上 和華 (ドウガミ ノドカ)



「う・・・・、頭が割れそうや・・・・」


目が覚めると、俺はベンチで仰向けに転がっとった。

横をよっぱらいが鼻歌うたいながら、通り過ぎた。

ゆっくり体を起こすと、どっかで味わったような、なんとも言えん違和感が全身にまとわりつく。

犬に吠えられ、酔っ払いの歌っていた鼻歌は終わった。

オレ、もしかして酔っ払ってんのか。

夜風が頬を撫でる。


痛む頭を抱えながら、記憶を辿ってみた。


「ここはどこや?」

辺り見回したら、どっかで見たことのある駅のロータリーやん。

バス停の表示は、さっきマミちゃんらと行こうとしてた駅の名前になっとった。

「あ、そうやマミちゃんや」

切れかけた蛍光灯が、暗号を送ってくるかのように点滅しているのが、少し苛ついた。

「どーいうこっちゃ」

自分の身体がまるで点滅しているかのように、目に映った。

「ちょー、もう、勘弁してやぁ、また入れ替わっとんかい!」

自分に突っ込んでてもしゃーないので、とにかく、連絡取ってみることにした。


携帯のロックを解除し、履歴からノドカちゃんの携帯にかけた。

「あ、もしもし?ノドカちゃん?俺、俺俺、俺やでヨウやで」

「え?ヨウちゃん?大丈夫?少し声がかすれてる。ちょっと待って、じゃあ、こっちにいるのは、シンジって人?」

「そっちにシンちゃんもどったんか?マミちゃんそこにおるん?ちょっと替わってや」

「マミさんなら、シンジさんを迎えにいくって、そっちに向かったわよ」

「そーなん?ほんならシンちゃんが戻ったこと、知らんねんな」

「うん、あっ、シンジさんが目を覚ましたって言ってる、ヨウちゃん、マミさんに会ったら、この件、伝えといて」

「わかった、あ、ノドカちゃんは今どこにおるん?」

「おねーちゃんと病院に向かってるわ、もう着くから、あとで来てね」

「病院てマドカのか、わかった、マミちゃんと合流したら、そっち向かうわ」


そんな会話してたら、マミちゃんの車がロータリーに入ってきた。

かぐや姫のお迎えが、月夜の晩に空から降りてきたみたいやった。

ていうても、姫はマミちゃんやけどな。

「おーい!マミちゃん、こっちやこっち」

自分も、重い体をひきずって、車の方へ向かった。


「マミちゃん、お久しぶり(笑)」

助手席のドアを開け、乗り込んだ。


「ちょ・・・・、ちょっと、あ、あなた、もしかして、ヨウちゃん?ていうか、シンちゃんは?」


マミちゃんのびっくりした顔も可愛いなぁ。



「もう、やっとシンちゃんに会えると思ったのに」

「あれれ?俺やったらご不満ですか」

「つまり、ノドカさんたちと一緒にいるのが、シンちゃんってわけね」

「その通り、さっきな、ノドカに電話してる最中に、シンちゃん目が覚めたらしいで」

「とりあえず、一安心ね、それにしても、ヨウちゃんがこんな姿だったなんて」

「あれ?ちょっとイメージ違った?タトゥ入ってるけど、一応ヨウちゃんやで」

「いや、うん、わたしが見た、超絶イケメンとはまた違う、かなりのイケメンなのね」

「え、マミちゃんが見たんは、これとはまた別のイケメンなんか?」

「そう、それに、刺青なんて、なかったもの、全然別人だった」

「どう?俺の顔は」

「え?うーん、なんだかすごく・・・・、作りもののような・・・感じ?」

「そうなんや、サイボーグっぽいん?」

「ああ、そうね、そう言われてみれば、そうかも」

「へぇぇ」

「へぇぇって、自分の顔なのに」

「似合ってる?この顔」

「はっきり言っちゃうと・・・、わたしがイメージしていた顔とは違うわ、イケメンには違いないけど」

「ありがとう、あ、マミちゃん、ごめんやけど、病院行ってくれへん?」

「あ、マドカさんがシンちゃんを連れていってくれた病院ね」



シンちゃんの中身、ほんまにシンちゃんなんか、心配になってきた。



「あ、そうやタバコタバコ」

「この際やめなさいよ、タバコなんて」

ポケットを探ったら、タバコの代わりに封筒出てきた。

「お、三万ゲット」

「なにそれ」

「たぶんマドカやな」

「バイト代のようなもの?」

「そういうこと、ラッキー、俺なんもしてへんで三万もらえた」

「すごいわね、数時間でそんな大金、って、どんな仕事内容なんだろう」

「言うときますけど、俺とマドカとの間に、肉体関係は一切ありません」

「え?パトロンなのに?」

「パトロンやからって、肉体関係求めてくるとは限らんやろ」

「えええ、そうなの?じゃあ、一体マドカさんは、ヨウちゃんの何を買ってるのかな」

「さあ、俺にもよーわからんわ、マドカのことは」

「不思議な関係ね」

「そ、だから、今からでも遅ないで、俺とつきあおうや」

「そのセリフを今まで、何人の女性に吐いたんだろう」

「え、気になる気になる?」

「気になりません」

「でも」

「ん?」

「うれしかったわ、タバコやめろって言うてくれたん、マミちゃんがはじめてやで」

「そう、なの?良かったね」


今までに、俺のことちゃんと見てくれたんは、ほんまにマミちゃんだけやった。

ま、そらそやな、俺の外見はマミちゃん知らんもんな。


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