第11話 特別
☆☆登場人物紹介☆☆
マミ:姫田 真実(ヒメタ マミ)
シンちゃん: 與 真心(アタエ シンジ)
ヨウちゃん: 黒崎 陽(あきら)
マドカ: 堂上 円華 (ドウガミ マドカ)
「ちょっと歩くけど、かまへん?」
ヨウちゃんは、休まずにずっと運転してくれた。
思えば、初対面なはずなのに、なんだか前から知っている人みたいで不思議な気持ちになった。
やっぱり、外見がシンちゃんだからかな。それに、この関西弁がやけに馴れ馴れしいというか、良く言えばフランクっていうか。つい、ヨウちゃんのペースにハマってしまう。
それにしても、あのイケメンの外見にこの関西弁キャラはとてもギャップがありすぎ。どうもしっくり来ない。もっと、冷たくて、近寄りがたい人なのかと勝手に想像してた。
だって、内面は外見に出るって思ってたし、これまで出会った人たちってそうだったから。
例外もあるのね。
「あのね、ヨウちゃん、ありがとう」
路上駐車をしてしまうと、駐車違反であとあとややこしくなるので、と、近くのパーキングに車を停めてくれた。
「いや、これは俺にも大いに関係あるしな、はい、カギ」
車のキーをバッグにしまい、辺りを見回すと、この位置からでもすぐにわかっちゃうほど、高級マンションですよと主張してそれはそびえ立っていた。
「正解やでマミちゃん、あれの最上階が俺のっていうか、このマンション自体がマドカの所有物やな」
「世の中には、わたしの知らない世界がとめどなく広がっているのね」
「シンちゃん、おるとええな」
「うん」
ヨウちゃんは慣れた手つきでロックを解除して、マンションのエントランス内にわたしを招き入れてくれた。
「暗証番号、変えられてへんかったわ」
「え?」
「普通はエントランスの暗証番号って、限られたヤツしか知らんねんな。たとえマンションの住人であっても教えてもらわれへんねんで。基本、カギ使うからな。マドカのやつな、時々暗証番号変えるねん、普通は鍵ってまるごと交換するんやろうけどな」
「そうなの?わたしは番号変えちゃったら、どの番号だったか忘れちゃうわ」
「いや、マドカ本人は指紋認証で解除するからな、ロック」
「なるほどね~なんだか、マドカさんってとんでもない人物みたいね」
「ある意味とんでもないかもしれんな」
エレベーターで最上階に着くのに、あっという間だった。
まるで地上から、別世界へ一瞬でワープしたような錯覚。
「ひ・・・、ひろーい!」
まず、ドアが大きい、無駄に大きい。タンスとかベッドなんか余裕で出入りできちゃうよ。
「まぁ、どうぞあがってあがって、スリッパ、はくんやったらそっちにあるわ」
「ねぇ、シンちゃんいるのかな?」
玄関の奥にあるドアを、ヨウちゃんが開けてくれた。
「呼んでみいや、返事するかもしれへんで、どっかに隠れてるか、まだ意識失うてんのかもしれんけど」
何故かとても緊張した。
この広い空間に、緊張して少し震えた声が響き渡る。
「シ、シンちゃん、いる?」
「あ、もし寝てるんやったら俺の寝室かもしれんな、こっちやで」
普通なら、知らない人、それも男性の寝室になんて足を踏み入れることはないのだけど。
一応、ドアをノックした。
返事がない。
「どうしよう、ヨウちゃん」
「俺が開けるわ、ちょっとどいてみ」
ドアを開けるシンちゃんの姿をしたヨウちゃんを見守る。
「う、うわああああ!」
「えっ、えっな、なに?」
「って、冗談、もぬけの空やった」
「も、もおおおおお!こんな時にまでやめてよ~~~バカー!」
でも、そのおかげで少し緊張がほぐれたのは確かだった。やるな、ヨウちゃん。
「見てみ、ベッドに誰か寝てた形跡ありやで」
「でも、いつのものか、わかんないでしょ」
「そうやけど、形跡がないよりか、期待もてるやんか」
「うん、ひとりで寝てたっぽいよね」
「あ、携帯、俺の携帯ないわ、いつもベッドにおきっぱなしやねんけどな」
「そうなの?じゃぁ、ヨウちゃんの姿をしたシンちゃんが持っていった可能性があるよね」
「この部屋に入れるのは、あのセキュリティを破れる泥棒か、マドカか、俺が誘って招き入れた人物か、俺と中身が入れ替わってしもたヤツしかおらんやろね」
「わたしは、その招き入れられたカテゴリに入るのね」
「お、そこ突っ込んでくれた?やるねぇマミちゃん」
「マドカさんが、携帯を持ちだすことはないの?」
「まぁ、ほぼないやろな」
「泥棒が入ったような形跡はなさそうね」
「まぁ、マンションは高級やけど、持ち出せるようなもんは置いてへんからな、ほんまなんも無いで」
「生活感ないよね、キッチンも使ったような形跡なかったもの」
「お、よく観察してるやん、するどいでマミちゃん」
「いや、さっき外食ばっかりって聞いたからね」
「それも含めてスルドイってことやわ」
「じゃぁ、やっぱり、シンちゃんがその携帯を持ってる可能性は高いよね」
「そやな、俺が招き入れた人物が部屋におる時は、携帯ちゃんと持つしな」
「ふうん」
「もしかして、ちょっとヤキモチ妬いた?」
「は?なんでよ、どうしたらそんな答えが導き出されるのよ」
「ごめんごめん、俺の希望的観測を言うたまでや、気にせんといて」
「マドカさんに言いつけてやろうかしら」
「携帯なかったら、マドカとも、シンちゃんとも連絡の取りようがあらへんな」
「固定電話は置いてないの?」
「あるわけないやろ、このマンションには必要ないんやから」
「一応、聞いてみたの」
わたしたちは、ここで壁にぶち当たってしまった。
少なくとも、ヨウちゃんの姿をしたシンちゃんは、ここにいた可能性がある。
そして、携帯を持ってここから出た。
わたしの携帯番号を覚えていれば、かけてくるはずだけど、きっと携帯のロックが解除できないでいるのだ。
「マミちゃん、俺のジャケットごと、車のキーも消えてるわ、おそらく俺に扮したシンちゃんが着て乗っていったんやと思う、マドカに呼び出されたんやな」
「ねぇ、マドカさんってどんな人?」
「美人さんやで、めっちゃ」
「超絶イケメンなヨウちゃんが、めっちゃ美人っていうくらいだから、もうわたしには想像を絶する美人なのね、ってそうじゃなくて、シンちゃんが大丈夫なのか心配なの」
「いやいや、俺なんてまだまだやで、マドカのまわりにはもっとすごいのがうじゃうじゃおるし」
「ええええ、そうなの?ヨウちゃんよりすごいイケメンなんてこの世に存在するの?しかもうじゃうじゃなの?」
「なんや、すごい褒められてるやん、こそばいやん、もっと褒めて」
「そうか、まわりがものすごくイケメンだらけだと、自分のイケメンっぷりなんてごくごく当たり前になっちゃうんだ、だからヨウちゃんはこんなキャラなのね」
「なんや褒められてんのか、なんかわからんようになってきたわ」
「シンちゃん、マドカさんにヨウちゃんじゃないってバレてないかな」
「バレるやろな、でも、マドカはちょっとやそっとじゃ動じひんで」
「そうなの?わたしなんて動揺しまくりで泣きそうだったわ」
「いや、それが普通やと思うで、マドカは特別なんやと思う」
『マドカは特別なんやと思う』
ヨウちゃんの発した言葉の中に、色んな意味が詰まってるなって感じた
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