41話

「全く! あなたって人はー!」

「もしも他の女子だったら、危ない目だったのよ!」

「済まない」


 エリスとシアに説教をされる僕は、叱られるエリスとシアに向けて土下座で謝罪した。

 女子更衣室に残っていたのは、僕とエリスとシアの三人だけだ。


「それにしてもヨシノ、どうして男子更衣室と間違えて、女子更衣室に入ってしまうドジだとは思えませんでしたわね」

「そうよ、みんなの先に行くなんて……いつもこうだったわね」


 先ほど、僕が先に体育館ドームの地下室にある男女別更衣室へ向かったが、どうやら、昨日の電源コードの点検ミスのおかげで、男子更衣室と間違えて女子更衣室へと入室してしまった。

 出る直前に、ドアの向こうから女子たちの会話を聞いた僕は、急いで制服を仕舞った一番奥のロッカーへと身を隠す羽目に。


「もしも私がいつものロッカーを開いたら……ヨシのが中にいて、本当に驚きましたわ」

「……」

「それに私も含めて」


 ロッカーの中はとても窮屈きゅうくつで狭く、身を沈めて音を立てずに気を静かに、女子たち全員が出て行くのを待っていたら、ロッカーの戸が開き出した。見つかると思い込んだら……目で顔を確認したのは、エリスだった。

 エリスはポカンとした目で、数秒足らずに、咄嗟とっさに戸を閉め出す。

 いつものロッカーを使用して戸を開いたら……あせりそうな顔で、しがみつくヨシノがロッカーの中にいて、本当に驚いた。


「それにシアさんも庇って、先に行かせてみなさんは出て行きましたわ」

「本当にありがとな」

「シアさんの協力してくれるとは」

「別にあなたに庇ったのではありません。私はオオウチ君を庇っただけです」

「オイオイ……少しはエリスに感謝しろ」


 そう……エリスが僕がロッカーの中に隠れているのを驚いたことに気づき、心の底から助かったと安心したところ……またもやロッカーの戸が開いてしまい、まさか不審ふしんな行動に気づかれたと思い、もう駄目かと覚悟したが、ところが、僕が目にしたのは、身近で知っている女子だった。前の学園で同じクラスメイトで委員長を務めていたシア・ノグチの姿が、唖然あぜんとした表情で、またもや戸を激しく閉じた。


「僕が悪かったよ。早く来たおかげで、女子更衣室に侵入してしまうとは……」

「そうです。本当に気を付けないといけませんわ」

「ヨシノったら、本当にドジなのですから」

「すまない……」


 エリスはため息を吐きながら、ヤレヤレとした恰好かっこうで、頭を抱え込む。


「でもね、もしもの場合……他の女子だったら……」

「あ……」

「そうね……」


 もしも、エリスとシア以外に、他の女子生徒が奥のロッカーを使用していたら……僕がロッカーの中に隠れているのを見て、物凄く悲鳴を上げて騒ぎになってしまうところだ。女子たちに袋叩きにされるだけでなく、風紀委員に連行する羽目になる。


「でも助かったよ……二人とも、ありがとう」

「もう行くのですか?」

「みなさんはいませんけど」

「でも、いつまでも女子更衣室にいちゃまずいだろう」


 女子更衣室を長く居続けたら、他の女子が戻ってくるに違いない。エリスとシアには迷惑が掛かる。


「それに引き換え、エリスとシアも早く着替えたらどうだ?」

「「はい?」」

「僕はもう出て行くから、このまま居続けると、二人とも運動着に着替えが出来ないだろう」

「そうでしたわ」

「うっかりしていたわ」


 エリスとシアは、まだ制服を着たままだと気づかなかった。二人は顔を赤く染めながら、話をしてきた。


「じゃあ僕は先に出るけど、慌てないでゆっくりと着替えてきな」

「「わかりました。ヨシノのH《エッチ》」」

「済まない……」


 恥ずかしがるような顔で、エリスとシアにエッチと言われた。

 ダレス達男子らは全員、もう既に運動着を着替え終わったところ、体育館ドームの構内にいるに違いない。


「じゃあ僕は先に出るね」

「はいですわ」

「じゃあ、また後で」


 急いで構内へと向かい、女子更衣室へと出て行こうとしたら……、


「待ってくださいヨシノ!」


 突然、エリスが声を掛けられ、僕は一旦と立ち止まる。


「なんだよエリス?」

「大事な事を忘れていませんか」

「大事な事?」


 一体、〝大事な事〟とは一体何だろう?


「あなたに制服、まだロッカーに仕舞ったままですわ」

「そうだった!」


 危うく制服を置き忘れるところだった。さっき女子が来る前に、女子更衣室に着替えていたよな。そう思う中、エリスはYシャツやズボンを両手に持って、ネクタイや上着などがシアが手にしていた。

 僕は自分の制服を渡されると同時に、


「ヨシノ、制服は男子更衣室のロッカーへしまってください」

「わかったよ。ちゃんと男子更衣室のロッカーにしまっていくから」


 制服はちゃんと男子更衣室へ仕舞った後に行かないと、僕は再びドアの方へ向かった。


「じゃあ……また後でな」

「はーい」


 僕は、ドアが自動的に白木、再び女子更衣室へと出て行った。





 女子更衣室へと出た直後、制服を仕舞うために男子更衣室へと向かい、男子達の殆どは誰もおらず、もう着替えて構内に向かっているだろう。

 男子更衣室へと入室し、空いているロッカーを探し、一番奥のロッカーだけ空いていて、そこで自分の制服を仕舞った。エリスと同じように……。

 男子更衣室を出て、急いで体育館ドームの訓練へ向かった。

 階段で一階へ上がり、構内の入り口へ辿り着くと、数十人のクラスメイト達がたくさんいた。


「おっ、ヨシノじゃないか」

「ダレス」


 アッチから運動着姿のダレスが手を振っている視線を向いて、僕はダレスの方へ近づく。


「どうしたんだヨシノ? 男子更衣室にいなかっただろう?」

「ギクッ!?」


 ダレス達男子生徒らは、男子更衣室へ着替えたが、僕が入室していない事に気づいてた。


「それは……その……」


 誤って女子更衣室へ着替えたとは、本当の事は絶対に言えないよ。

 正直に事情を話してしまうと、男子生徒達は悲しみに満ちて、嫉妬しっと敵視てきしに浴びてしまうだろう。

 こうなったら、無理にして誤魔化そうとして、ダレスに嘘を付いた。


「トイレに行ってたんだよ。ちょっとお腹が壊して、出た後に男子更衣室へ行ったら、みんながいなくて」

「トイレに行ってたのか?」

「ああ」


 どうやら、嘘を通用したよ。女子更衣室に着替えた事は黙っておこう。心の底から女子更衣室へ入った報いとあやまちを懺悔した。


「今日の実技はなんだろうな?」

「さあな」


 ソーラー学園の実技の授業は、一体何を受けるのか、ソーラー・グラスの着用した適合者である生徒達にとって、実技授業にとっては大事。


「間に合いましたわ」

「ギリギリ」


 出入口の方から、慌てて遅れて来たエリスとシアが、息切れする程、授業開始直前に間に合い、他の女子たちと行動した。

 予鈴のチャイムが、構内から鳴り響き、もう実技が始まる時間だ。


「授業……始まったな」

「ああ」


 今日から僕も、ソーラー学園の実技授業を受ける事になりそうだ。どんな試練に乗り越えるのか、担当教師が来てからだ。

  


 




 





 



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