31話

「何⁉ 暴力佐太だと?」

『はい!? それが例の不良グループが……』

「あのたわけどもめ……それで? 状況は?」


 私は薄暗い室内で、会議中に掛かって来た電話に出ると、画面越しに映ったのは、風紀委員の女子生徒からだ。

 椅子に腰を掛けながら、私は慌てる風紀委員女子に通話をした。

 それは……今日の放課後で、問題行為の通達だ。


「問題行動とは一体、何をしでがしたんだ?」

『はい。不良生徒達は、また生徒に恐喝を起こしましたので、そこで一人の男子生徒が止めに入ったんです』

「怪我を負ったのか?」

『いいえ……そうではありません』

「ならなんだ?」

『怪我をしたのは……不良生徒全員です』

「何? それって本当か?」

『全員ベッド送りになるほど重傷です』


 あの不良どもが満身創痍だと、こんな事は、初めて聞いたぞ。

 奴らが怪我を負った原因はなんなのか、気になって電話の相手の女子に話付ける。


「そいつ等は怪我を負っているだろう。一体どこにいるんだ?」

『はい。彼らの怪我は、顔面、手足の骨折、身体中に傷だらけの状態で保健室に搬送されました』

「そうか」


 相手の女子から聞くと、不良たちの顔は、変わるほど殴られ。保健室で医学クラスの生徒から治療を受けていた。

 それにしても、一体不良たちをこんなにボコボコな腫れた顔をしたのか。こんなことをしでがすのは、あのバカ教師しかいない。


「それで……問題を起こした奴はどうした?」

『連行しました。今は牢屋の反省室で取り調べています』

「そうか」


 その問題を起こした生徒は、駆けつけた風紀委員にすぐ様連行、今は取り調べを行っている。

 一体どんなバカが、暴力佐太を起こしたのか、私はその生徒の事を話した。


「名前または中等部か高等部……男子か女子なのか、詳しく話せ」

『中等部の男子です』

「中等部が問題を起こすとは?」

『しかも彼は今日からこのソーラー学園に転入してきた少年です』

「なんだと!?」


 そう言えば、隣に置いてある転校手続きの資料と、さっき理事長から買いかれたことがあった。


〝おもしろい輩がおるぞ、あのバカ者と共に歩んだでいたぞ。とてもおもしろいやつじゃ〟


……と謎めいた説明を聞かされた。

 あの馬鹿者とは……デウス教師の事だ。

 私がひねくれヤンキーだった頃、昔はよくデウスと喧嘩したな。とてもいい先生だった。


「それで……奴の名前は?」

『名前は……ヨシノ・オオウチです』

「オオウチ?」


 電話越しを耳に通し、そのオオウチという人物、どこかで聞いた事あるような……ないような、


(思い出すのはまた今度にするか)

『話は以上です。申し訳ございません。今は会議中でお急ぎだったでしょうか?』

「気にするな。問題の報告ありがとう」

『はい……ごきげんよう」


 女子生徒は別れの挨拶をし、レンズ越しの映像はプツンと途切れ、コールアウトのボタンをタップした。


「とても大変な奴が、この学園に来てしまったな」


 レンズから写り込む転校生ファイルをクリックする。

 今日の転入生の顔写真を確認した。

 右は赤毛と、左は白髪を混じったハーフの少年である。


「そうだろう……みんな」


 室内から明かりが点灯し、目の前にはテーブル席に座る4人の女生徒の姿が並んでいた。

 これが我ら、ソーラー学園生徒会である。


「生徒会長! 例の転校生について質問してもよろしいですか」


 最初に声を掛けて来たのは、赤毛のショートカットをした、アリス星人の女子生徒が声を掛けて来た。


「何が言いたいんだ? キキョウ?」


 キキョウ・アケチは、生徒会副会長を務めている真面目な女子生徒だ。アタシのイジられキャラみたいな奴だ。

 少しは弱気な性格もあるけど、彼女の掛けているメタルツーポイントラウンドフレームのソーラー・グラスを愛用している。


「彼は前の学園で問題を起こしてます」

「それがどうした?」

「何故あんな輩を学園に入れるのですか?」

「それは、適合者になった以上、転校するしかないだろう」

「彼は問題児ですよ! 先ほど連絡した女子生徒によると、不良グループ全員、重傷ですよ‼」

「それが言いたいのかい?」

「はい!」


 確かに、キキョウの言う通り、あの転校生のオオウチと言う男子生徒、かなり厄介だ。

 情報からによると、前の学園で暴力佐太を起こし、何度かの停学処分、何十人以上の不良とチンピラを病院送りにした。

 詳しい情報は、全くつかめていない。


「まあまあ、キキョウちゃんったら、少しは落ち着いてよ」

「何が言いたいのよ! ハシバ‼」


 キキョウの隣に座る、背は小柄なアリス星人で、赤毛のサイドツインテールと、四角い眼鏡を掛けた女子だ。

 彼女はキリヨ・ハシバ、私の付き人兼幼馴染である。生徒会庶務しょむを務める。


「あの少年って……面白い人だからいいじゃない」

「何が言いたいのですか?」

「だって……彼は私と同じ背が低く、しかも……美男子じゃない」

「それは関係ないでしょう!」


 相変わらず、キリヨはマイペースな態度だよ。

 私の一番にお気に入りで、私が幼い頃からキリヨとずっと一緒だ。つまり、腐れ縁って奴だ。キリヨをよく〝サル〟と呼んでいたな。

 キリヨは木登りが得意から、私があだ名でサルと呼んでいた。

 全く関係のない話を持ち込まれて、聞いたキキョウに叱られるキリヨ。


「それにしても、彼は何者でしょうか?」


 質問をしてきたのは、腰まで伸びたロングヘア―な赤髪をしたアリス星人、背が高く、巨乳でスタイル抜群、温和な顔付き、眉毛が少し太く、桃色の唇をしている。それに黒い丸型のソーラー・グラスを掛けていた。彼女は大和撫子風な女子生徒である。

 私のライバルで、ヨシカ・イマガワ、生徒会書記を務めている。

 ヨシカは私のライバル、二年前の選挙戦・オゲハザマ大会で、誰が生徒会長になるのか、一騎当千で対決した。

 イマガワを支持する人間と、私を応援する連中と共に戦い。一騎打ちでイマガワを圧勝した。

 私が現・生徒会長として後任として決められた。


「オイオイ……イマガワ? 加害者の事を知っているのか、知らなそうに見えるけど?」

「なんですかその態度は! 私はあなたの事を負けだと認めませんからね‼」

「またそんな話か、相変わらず負けず嫌いだな」


 あの〝オゲハザマ〟でのことを巻けて悔しかったのか。生徒会書記に当選したなら、ありがたく思いなさい。


「みんなわかったよ。オオウチという人物、聞いた事があります」

「マツダイラもか?」


 手を上げて来たのは、生徒会会計のアオイ・マツダイラ、イマガワの付き添い兼メイドとして、奴と共に行動している。

 三つ編みな赤毛をしたアリス星人、しかも学園の制服ではなく、着物みたいな袴を着用し、草履ぞうりなど履いている。赤井丸縁のソーラー・グラスを掛けている。

 マツダイラは、その問題を起こした少年を知っている。


「彼は元・アリス星大企業・オオウチグループの御曹司です」

「「オオウチグループ?」」

「思い出したぞ。アリス星企業と言われたオオウチグループか」


 父か生きていた頃、パ―ティーでオオウチグループと何度か会った気がした。

 よく昔の事を忘れるなんて、少しは状況を考えないといけないな。


「確か……あのグループが解散したと?」

「例の事件だな」

「事件って……虐殺放火事件ですか?」

「そうだ」


 7年前の昔に起きた出来事、オオウチグループの会長の誕生日パ―ティーの最中に、何者かによって、家族と親族や会社の社員が無残に殺され、会場は火の海と化し、百数十人以上が亡くなり、あの事件は全ソレール系で広まった。

 生き残ったのは、親族やその社員の子息だけが助かった。


「生き残った子供たちはどうした?」

「それは、事件性の当日、無事に保護した直後に、親戚または義理の家族として、引き取られました。何人か適合者として、ごの学園に通っています」

「何故オオウチ家の息子がこの学園に?」

「それがですね、諜報科クラスが、彼を保護した医療施設のリストを調べたところ、引き取った輩が、重要人物だと思われます」

「重要人物? マツダイラ、誰なんだ?」

「はい。ヨシノ・オオウチを引き取り人は、元ソーラー学園体育教諭の……デウス先生です」

「「「なんだって!」」」

「デウスだと!?」


 ヨシノ・オオウチの引き取り人が、我がソーラー学園の元教師のデウスとは、

 あの事件直後に、学園から消したデウスが……

 まさかあのバカ教師が、両親のいないオオウチを引き取ったのか。アイツ……奴を無理やり地獄の特訓に付き合わされたに違いない。多分、それが原因で、不良たちはボコボコにするとは。


「ヨシノ・オオウチがデウス先生と共に生活は……言えないな。多分、喧嘩けんかをした時も、鬼みたいな感じでしょうか?」

「それは……本人に聞かないと」

「けど、本当にデウス先生と知り合いなのか?」


 それが一番の問題だ。あのデウスに引き取られ、一緒にいたオオウチは、彼女の行き先と目的は何なのか、直接本人に聞き出さないといけないな。


「あの、生徒会長」

「どうしたアケチ?」


 近くにいるアケチは、謎めいた顔で、私に話しかける。


「そういえば、彼の転校任務を成功した生徒がいます」

「本当かアケチ!? 誰だソイツは」

「中等部の女子生徒……エリス・ザビエルです」

「エリスちゃんが?」

「あの黒い髪をしたシスターが?」


 あの中等部女子生徒シスターが、アイツは宗教団体のアースラー教の信者だ。

 それにアイツは、あのオオウチの転校任務を含めていたな。

 しかも、転校初日にエリスと同じクラスなっているとは、転校生のクラス一覧に書かれていた。


「それなら、エリスちゃん一緒に聞き出すのは、どうですか?」

「それは名案だ。任務遂行したなら大丈夫だ」


 あの黒髪シスター《エリス・ザビエル》なら、転校生の少年オオウチ・ヨシノの事を聞き出せるかもしれない。


「全員……エリスに聞き出すなら、賛成か?」

「「「「賛成!」」」」

「そう。みんな、これ


 全員、賛成の意見を返事した。


「では、会議は以上だ」


 私と前にいる生徒会全員、椅子から立ち上がって起立した。


「今日のソーラー学園生徒会会議を終了する。みんな……ご苦労」

「「「「ご苦労様です。オダ会長!」」」」


 四人の生徒会女子生徒は、大声で号令する。

 私、ノブナ・オダは、このソーラー学園生徒会長でありながら、頭の上から、愛用であるカラーソーラー・レンズのディアドロップ型の、ソーラー・グラスを顔に掛ける。

 












 





 


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