32話

「なんだよ! あの連中はよ。おかげで一時間も説教されたよ」


 僕は、怒りながら徒歩で帰宅していた。

 風紀委員に連行された直後、学園の地下取調室で、風紀委員とその生活指導の教師に、厳しい尋問じんもんを受けて、一時間に及ぶ説教を聞かされた。

 それに、人の気配がなく、辺りはすっかり夜になっていた。


「なんだよ! あの風紀院の連中は! 僕はタダ人助けをしたのに、聞く耳持たないだろう?」


 僕はエリスと一緒に、学園を回っていた。その最中に裏校舎で迷子になる。

 そんな中、不良グループに遭遇し、奴らは少年をリンチしながら恐喝きょうかつをしていた。

 僕は、奴らの悪事を止めただけだ。


「それにしても、エリス……もう帰ったのかな?」

 

 一緒に行動していたエリスは、僕が風紀委員に連行してしまう中、

 エリスは後を追いかけたが、校舎に入る中、風紀委員女子に止められた。

 解放直後に、校舎の外へ出て行くと、エリスの姿は何処にもいなかった。

 もう最終下校の時刻だ。きっと学生寮に戻っているはずだ。


「このアプリ、学生寮の案内出来るのか」


 僕は、学生寮をどう行けばいいのか、ソーラー・グラスで、マップナビのアプリを起動した。

 レンズ越しに点滅するマップで、学生寮の行き先を確認し、道なりの手順に歩いていた。


『次の角を左です』

「次の角を左に曲がれば、学生寮か……」


 そう考えた中、ナビ案内の音声を聞きながら、次の角を左に曲がった。


『目的地に着きました。音声案内を終了します。おつかれさまでした』


 数分で歩いたらもう到着か、音声を流れるアニメ声優みたいな女性ナビゲーターみたいだな。


「ここが学生寮か」


 立ち止まると、今日からここに住む〝学生寮〟だ。

 建物の構造は、現代風の3階建てのビル型アパートだ。綺麗でハイテクな要素があるよな。


「入っても大丈夫かな?」


 僕は取り合えず、学生寮へと入った。


「入り口はここか」


 学生寮の入り口へ近づくと、自動的にドアが開く、中に入ってみると、受付と書かれた電子看板が点滅し、管理室が設置していた。

 そこで聞いてみようと、管理人室にいる寮長に話しかけた。


「すみませーん。ちょっといいですか?」

「はーい」


 受付に出て来たのは、ジュピター星人の若い女性だ。エプロンを羽織って、緑髪をしたポニーテール、それに四角いソーラー・グラスを掛けていた。

 どうやら、彼女はここの寮長さんだろうな。


「あのう、ここが学生寮ですか?」

「そうだけど?」

「僕は、今日からこの寮にお世話になります」


 取り合えず、僕はそのエプロンの女性に話しかける。


「君? 転校してきた少年でしょう?」

「はい!」

「この寮に入居でしょうね?」

「そうです」


 僕は、彼女の言った通り、しっかりと返事した。


「お部屋のキーである学生証がまた届いていませんけど、開けてもらえませんか?」

「君の学生証はまだ届いていないのね、わかった。お名前を記入してください」

「はい」


 受付からデジタルペーパーが出現し、入寮申請書と書かれていた。

 この寮に住むために用意しただろう。

 僕は、その申請書を、自分の名前を記入した。


「名前はヨシノ・オオウチ君ですね、ちょっと待ってください」


 彼女は、申請書を登録した。


「受付終了です。あなたの部屋へ案内するわ」

「それはどうもありがとう」


 彼女は、管理室のドアから出て来た。一緒に自分の部屋へと向かった。


「私はこの2号館学生寮の寮長のエレンです」

「エレンさんですね」


 やはり寮長さんだったか。結構若すぎだろう。中年ぐらいのおばさんかと思ったよ。

 名前はエレンさんか、いい名前じゃないか。


「でも、学生寮は規則があるので、厳しくしますので、覚悟を決めてね」

「は……はい……」


 厳しそうな顔付をする寮長のエレン、2号館の学生寮に暮らすのはとても大変だ。少しは注意しないといけないな。それに深夜アニメを見逃すことができない。


「さあ、お部屋へ案内するわよ」

「わかりました。わざわざご苦労様です」


 寮長のエレンに礼を言って、部屋へと向かった。


「部屋の場所は?」

「二階よ」








 エレンさんと一緒にロビーを通って、エレベーターの前に立つ。

 エレベーターで二階に到着し、ドアが開くと、何人かの男女の生徒が目の前にいた。

 降りるところ、その連中はエレベーターに乗車して、ドアが閉まった。


「男子と女子が一緒に住んでいるんですか?」

「そうわよ、この2号館は学園で唯一……男女共同の寮なのよ」


 驚いたなこりゃ、この2号館の学生寮が、唯一の男女共同だとは。

 まさか、男子と女子と一緒に屋根の下に住むように、食事したり、会話したり出来るのか。


「でもね、男子は二階、女子は三階に分けられているわ」

「階が別々ですか?」


 2号館の寮に住む男女が別々とは、

 二階が男子、三階が女子、一番奥まで歩くのを止める。


「ここが、あなたの部屋です」

「ここですか」


 どうやら、学生寮の二階の一番奥にある部屋だ。ドアの札から〝209号室〟というナンバープレートと書かれていた。

 寮長は、ドアに近づき、カードキーを差し込んで、部屋のドアを開けてもらった。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 寮長に礼を言って、僕は部屋に入ろうとしたら。


「ちょっと待って」

「何か問題でも?」


 すると、寮長が慌てて注意するように声を掛けた。


「あなただけでなく、この部屋に住む生徒もいらっしゃるのよ」

「それって……共同ですか?」

「ええっ」


 つまり、この部屋に住む生徒と一緒か、一体どんな男子生徒かな。


「一つ……忠告ちゅうこくします」

忠告ちゅうこく?」

「209号室に住む生徒は、気を付けてね」

「はい?」


 209号室に住む生徒に注意されるとは、一体相手は誰なのか。

 強面の不良、あるいは学校の授業に出席せず、部屋に引き込む男子生徒か、一体どんな奴なのか、会わないといけないな。

 そう考えながら、209号室ドアに開いて、部屋の中に入った。








 ドアに入った直後、玄関で靴を脱いて、キチンと靴箱へと仕舞った。

 学生寮の部屋の奥まで行くと、


「綺麗な部屋だな」


 何LDKの普通の部屋だ。僕が立っている場所は、デレビやソファーが置いて、カーペットをいた居間だ。背後を振り向くと、冷蔵庫や洗面所も設置している台所だ。

 すると、風呂場からシャワーを浴びる物音が聞こえた。

 どうやら、生徒は入浴中だろうな。邪魔しないように気を付けよう。


「さてと、明日は学生証が送信してくる時間は、明日の朝だな。それに僕の私物が届くのは、今度の休日頃だろう」


 ソーラー学園に転校する直前、学園の許可で自分の私物を持っていける許可が出来た。

 僕の私物は、新型のゲーム機とソフト、アニメのSDソフト、漫画・ラノベなど、数々集めたコレクションだ。


「テレビは……この寮の部屋にあるけど、SDレコーダーがないと、録画が出来ないな。それに、テレビにSDレコーダーが設置しているよな」


SDレコーダーは寮の部屋に持ってきても、邪魔になるな。それに気になっていたのは……。


「相手は誰だろうな。今はお風呂に入っているよな?」


 この部屋に住む相手は、先程、寮長さんが言った通りに警戒しないと、

 問題を起こして、謹慎処分したのか。


「準備しないといけないな」


 そう思った中、台所に向かい、冷蔵庫の中身に確認する。


「オッ! メロンサイダー発見‼」


 何本かのメロンサイダーなどの炭酸ジュースの瓶が置かれていた。それを一本手に取り出して、冷蔵庫の戸を閉めた。

 瓶のボトルを取り外し、椅子に腰を下ろし、メロンサイダーをゴクゴクと一気飲みした。


「プハーッ! 生き返る―!」


 飲み干したメロンサイダーの空の瓶をテーブルに置くと、風呂場から声が聞こえた。


「誰かいますか~?」

「!?」


 突然、風呂場から聞き覚えのある声が聞こえた。


(どこかで聞いた声だな……)


 一体何処かで会った気がする。すると風呂場のドアが開き、生徒が風呂から上がったに違いない。僕は慌てて隠れようとしたが、もう遅かった。

 その生徒の姿を見てしまった。


「アレ?」

「……」


 風呂場から出て来たのは、なんと女生徒だ。何故二階の男子ペースに女子がいるんだ。

 風呂場から湯気ゆげが出て、何も見えない状態だ。

 彼女は白い絹のタオルを巻いておらず、腰まで伸びた濡れた黒髪、少したるむように揺れる巨乳、素肌を披露していた。


「な……お前……エリス……!?」

「ヨ……ヨシノ!?」


 しかも、僕が知る人物であった。迷惑がちで僕に攻めるように説教するエリス・ザビエルが目の前にいた。

 生まれたままの姿で披露するエリス。

 僕が一番驚いたのは、エリスの顔には、ソーラー・グラスを着用していない。

 美貌びぼうの素顔がとても可愛すぎるだろう。

 エリスは、怯える仕草で身体を震える。顔をトマトのように赤く染まる。


「あの……イヤ……それは……」

「イヤですわーー!!!!」

 

 エリスは恥ずかしながら大声で絶叫した。

 悲鳴を上げながら、エリスは両手で自分の身体を隠した。


「待って! 違う! 誤解だから! 話せばわかる‼」

「見ないで変態ー!」


 エリスは、隣にある空の瓶を左手で掴む。目をつぶるように、僕に向けて投げつけた。


「ブへッ!?」


 そして……僕の顔に直撃した。

 本当に命中するとは。

 ソーラー・グラスがずれ落ちて、僕は倒れ込んでしまった。

 まさかエリスと一緒の部屋だとは、思いも寄らなかった。


(これからは……どうすればいいんだ)




 















 







 



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