29話

「もう安心ですわ」

「そうだね」


 辺りは少し暗闇の中だ、無事にクラスの連中から逃げ延びた。


「何故僕達……テーブルの下に隠れるんだ?」

「仕方ないですわ。忍者みたいでカッコいいですわ」

「聞いてねー」


 僕とエリスが隠れている場所は、中等部校舎の一階にある食堂(あるいは休憩所)の丸いテーブル席の下だ。

 エリスと一緒にクラスメイトの逃れる為、通りかかった食堂にあるテーブル席の下で身を隠した。

 でも、こんなに小さな丸いテーブル席ですぐにバレるかと思いきや、クラスメイト達は目の前にあるテーブル席の下で隠れる僕とエリスを気づかれず、そのまま立ち去って行く。

 クラスの奴らは本当に気づかなかったな。


「クラスの奴らはいないぞ、出てもいいかな」

「そうですわね、もう出ましょう」


 頭上ずじょうにぶつからないように注意して、テーブルの下に出て来て、態勢を整いて立ち上がった。余程身体中に傾くほど筋肉痛になりそうだ。


「それにしても……ここにいる人間って多いよな?」

「ええ……放課後になると、ここで勉強と課題をする生徒もおられます」


 エリスから話によると、この食堂兼休憩所のエントランスでは、勉強などの復習する生徒もいた。テーブル席で友人と一緒にいる集団や、あっちのカウンター席では、一人で勉強したり読書をしたりする生徒もいた。


「それで、学園の案内をするのか?」

「はい」

「とても大きいぞ」

「大丈夫ですわ」


 エリスはスマイルな顔付きをしながら指を突きつける。マンモス校を一周するのか?

 でも、一度なら学園を見て行かないといけない。


「エリス……案内は大丈夫なのか?」

「失礼な! 私はこの学園に何年も通っていますのよ」

「そうか?」


 エリスはプンプンとしながらほおふくらます。何年もソーラー学園に通っているよな。不謹慎ふきんしんな事を言い過ぎたかな。僕は仕方なくエリスに謝った。


「ごめんよエリス」

「いいですわヨシノ」

「そうだな、なら……早く案内してくれ」

「ええ……門限までに案内します」

「門限ねえ……」


 今は夕方に近い、日差しと空が赤く染まっている。時間厳守まで寮に戻らないといけないな。


「早く行きましょう」

「おおう」








「ここがソーラー・グラスの具現化した武器と、発動した能力を試す訓練所か?」

「はい」


 まず最初に訪れたのは、学園でソーラー・グラスの武器や能力などに実技を行う訓練ドーム、僕とエリスはその構内に入っていた。


「色々あるよな」

「はい」

「リアルだけでなくⅤRもあるのか?」

「そうですわ」


 周囲のドームには様々な訓練をする場所がある。

 左から草木が生えている訓練所、右からⅤRルーム、リアリティー感覚で訓練を受けやすくする為なのか。


「あっちは射撃所の訓練もあるのか?」

「はい。銃の所持に必要な時には、射撃の訓練も備えないといけません」


 もしもソーラー・グラスの武器が出なかった場合に必要か、一人の生徒が銃でターゲットらしい物を発砲している。


「アイツの銃の構え方が間違っている。これじゃあ外してミスになるな」

「ヨシノは銃とか詳しいですか?」

「お師匠様に教えた経験が」

「デウス先生ね」

「お師匠様と一緒に射撃の訓練を励んでうまくなりました」

「それはよかったですわ」


 お師匠様であるデウスに、銃の所持の仕方を教えてもらったり、撃ち方と構え方、それから組み立ても教わった。

 それに一つ気になっていたのは、対決で実技を行い生徒もいる。


「ゲームみたいに勝負する実技も行うのか?」

「対戦勝負を行いますわ」

「決闘対決する実技だけでなく、試合や大会を行っているのか?」

「ええ……この学園で年に一度行われるソーラー・グラスにおける大会が行われます」

「大会まであるのか?」


 エリスの話によると、この〝ソーラー学園〟で年に一度、大会が開催される。

 色々な学科の生徒達と対決し、ソーラー・グラスの適合者がどれだけ強いのか、力試しを確かめているみたいだ。


「それでは次に行きましょう」

「次ってどこへ?」

「外です」








「外でも実技を行うのか?」

「はい。ソーラー・グラスで頼らず、自分で鍛える人たちもおられますわ」


 次に訪れたのは、学園で最も〝広い運動場〟と言われている校庭だ。

 ソーラー・グラスの発動する能力や武器の具現化だけでなく、自力で筋トレをする生徒も多くいる。このグラウンドで特訓や体育の授業、運動をする生徒も多くいた。

 今は放課後の時間、生徒達がグラウンドで一周してランニングしている。

 真ん中のグラウンドからは、体育用具で訓練する生徒もいた。


「能力と武器で頼らずに、自分の力で鍛える奴らもいるのか?」

「ええ、あなたと共にいた問題教師のデウス先生から地獄の特訓を授業は……もうありませんか」

「ウウッ……お師匠様ったら!」


 お師匠様……本当に出会う前に問題教師扱いとは、よく生徒達に無理矢理特訓させるのは程々にして、そういえば風紀委員の高等部であるゼニガタ先輩も、酷い目に合わされたって聞いたな。

 今はお師匠様であるデウスは、僕を保護するために教師を退職し、そお授業はもうなくなっていた。

 

「ヨシノはデウス先生と一緒に、修業を励ましていましたよね?」

「もちろん。よくお師匠様に厳しい特訓に付き合わされたよ」


 僕がエリスと出会う以前の昔に、お師匠様と一緒に放浪ほうろうの旅に出て、修業するために山籠やまごもりしていたな。大岩で数百回の腕立て伏せに、お師匠様の格闘・護身術を何度か教わった。

 お師匠様のおかげで、僕は強く生き続けた。


「それにしても、走るだけで汗かくよな」

「ランニングしている方々は、元々スポーツを習っていましたわ」

「そうなのか?」

「ここにいる生徒は、前の学園でスポーツを活躍していました」

「なんだか可哀そうだな」

「しかし、適合者になった直後、スポーツと同じ道具が武器として具現化します」

「本当か?」

「本当です」

「つまり……体育系タイプだな、戦闘状態になった場合に、ソーラー・グラスで具現化した武器がスポーツ用具だったり、その能力が発動するのか?」

「はい」


 運動場でトレーニングをしている生徒の多くは、前の学園で活躍した体育系の選手だった生徒も少なくない。

 聞いた事がある。ソーラー・グラスの適合者になった体育系の人間は、ソーラー学園に転校した際に、活躍しているスポーツが参加することが出来ない。悲しい運命だ。

 ところが、ソーラー・グラスで適合者になった場合、武器がスポーツ用具と類似して具現化する。


「みんな頑張っているよな、能力や武器だけでなく、自力が鍛えるとは」

「ヨシノさんが感心するなんて」

「まあ、僕も同じだよ」

「そうですね、次へ行きましょう」

「今度は何処へ?」

「ソーラー・グラスのフレーム工房ですわ」

「工房?」










 次に訪れたのは、鼻の奥から薬品や金属臭い


「ここって……ソーラー・グラスの?」

「はい! ソーラー・グラスのフレームが作られている工房ですわ」


 僕が知るソーラー・グラスのフレームが作られている工房だ。ここに置いているフレームは大量の生産されている。

 外装がいそうは倉庫みたいな建物で、エリスと一緒にいる内装ないそうはとても広く、いくつかの作業部屋が多く、それぞれの場所でフレームを製造している。


「ソーラー・グラスのフレームを、この工房で作られているのか?」

「はい。生産だけでなく、自分の好みの形をオーダーを依頼したり、壊れたりした場合には、メンテナンスをして、ちゃんと修理してくれます」


 製造だけでなく修理もしてくれるのか。

 ソーラー・グラスのソーラー・レンズがヒビが入って割れたり、テンプルのすじのネジが外れたり、工房に持ってきて修理してくれる。

 アッチから丸いソーラー・グラスを掛けたアリス星人の男子生徒が、椅子に座りながらフレームのデザインを測ったりしている。

 箱が置かれる場所で、四角いソーラー・グラスを掛けたジュピター星人の男子生徒が、必要な部品と、素材を確認している。

 フレームに大事なデザインと、各惑星で集められた自然と科学の素材で、ソーラー・グラスが製造されている。


「ここにいる生徒達と教師が作るのか?」

「はい。彼らは眼鏡課です」

「眼鏡課?」

「そういえばヨシノ、眼鏡課は知らなかったですわね。彼らはソーラー・グラスを生産して製造するチームですわ。ここにいる人たちを職人と呼ばれていますわ」

「職人?」

「ソーラー・グラスのフレームを作る人達の事ですわ。一日に一万も生産されていますわ」

「一万⁉」


 ここサーバタウンは、ソーラー・グラスのフレームがアリス星生産一である。

 いくつかのフレーム製造して生産した数は、一万以上だ。


「凄く製造しているよな。職人の奴らは大丈夫なのか?」

「大丈夫です。日にちで担当を決めて製造する事もありますわ」

「決め事多いよな」


 フレーム作りと素材集め、ソーラー・レンズや形などのデザイン要素、職人には大事だ。

 サーバタウンとソーラー・学園……恐るべし。








「ソーラー学園……以外に大きすぎるな」

「この学園に必要な施設も建てられていますわ」

「ところで……ここは何処なんだ?」

「はい?」


 エリスと一緒に二人で歩いていると、ここは人気のいない場所である。

 エリスの学園について説明を聞いている途端、いつの間にかこんな場所に来てしまった。


「まさか……迷子になったんじゃあないだろうな」

「……」


 エリスに話しかけると、彼女は無言のまま黙ってしまった。


「エリスさん?」

「すみません……」

「やっぱりな」


 本当に迷子になってしまった。エリスは何年もソーラー学園に通っているのに。

 エリスは泣き崩れる程に悲しんだ。


「本当にすみません……ヨシノ、私はー」


 次の瞬間、謝罪したエリスが言いかけたところで、アッチから物凄い声が聞こえた。


「オラー!」

「十点!」

「ヒャア⁉」

「なんだ⁉」


 突然ながら荒くれた男の声が聞こえた。

 僕は気になって仕方なく、その声の方へと視線を向くと、そこには……不良グループが少年にリンチしている現場を目にした。





 






 



 






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