28話

「ハア……ハア……間に合いましたわ!」


 午後の授業開始まで後十分、私は慌てて息切れしながら廊下を走り、ギリギリセーフのところ、五組の教室に到着した。


(それにしても、先生から任務終了のメールが返信してきた事ですわ? 一体どうして午後の授業に出席しろと?)


 先ほど、ヨシノと一緒に理事長室を訪れ、理事長を転校の挨拶に伺った直後、退出直後にソーラー・グラスで先生からのメールが届くのを目にした。

 私は指先でメールをタップすると、本文に書かれたメモを確認する。

〝エリス・ザビエルさんへ、転校生の移動任務終了です。早く午後の授業に出席してください。教室で大事な特別式があります〟

……と書かれていた。一体クラスで大事な〝特別式〟とは? 私は仕方なくヨシノさんに任務終了の事を話して、彼は気にしていないので理解し、私は急いで五組の教室へと向かった。

 本館から中等部校舎まで息切れになるまで走り続いた。


「全く、なんで私が授業に出なければいけませんの?」


 教室に辿り着いた後、すぐに自分の席に、

 私の席は一番後ろの真ん中にある。


「よおザビエル」

「⁉」


 突然、誰かが自分の名前が呼ばれ、私は声の掛けて来た主が気になって振り向くと、サングラスを掛けたクラスメイトの男子生徒だ。


「ダレス君⁉」

「お前、転校生の移動任務の為、午前の授業に出席していないのに、放棄していいのか?」

「それは……先生からの任務終了のメールの返信が届きましたので」

「そうか。ならいいや」


 男子は話をその辺にした。

 彼はダレス・マッカーサー。私と同じ五組のクラスメイト男子である。

 彼はヴィーナス星人、トレードマークであるさわやかな長い金髪、両耳に付けているリング型のピアス、スマイルな美形、金色の瞳、180㎝の長身、そしてティアドロップメタルの色付きレンズのソーラー・グラスを掛けていた。

 クラスメイトで最も美男子である彼にとって、頭脳万端ずのうばんたんと運動神経抜群な性格を持っている。

 彼は将来、家族と友人を守る為、軍人になるのが夢を目標にしている。


「午後は暇? だったら俺と一緒にデートー」

「お断りします! 大事な用事がありますので」

「そんな!?」

「プレイボーイな態度は程々にしてください。ダレス・マッカーサー」

「ヒデェ……シスターは厳しいよ……」


 ガーンとショックを受けるダレス、泣き崩れる程、目に涙が大量に流すほど号泣する。


「おはよーエリス!」

「リンさんおはよう」


 楽し気な顔をして、私に挨拶を交わす小柄な女子生徒、

 彼女はリン・オオトモ。彼女はこのアリス星のユートピア皇国の出身である。私と同じアースラー教の信者で、シスター仲間である。

 リンと出会ったのは、アースラー教アリス支部で出会い、彼女もシスターとして信仰を続けている。

 小柄な体型に、胸は控えめ、ボーイッシュな赤毛、幼い童顔、サイズの合わないブカブカな制服、それからボストンフレームのソーラー・グラスを掛けているた。


「エリス、今日も元気だね」

「あ……ハルナさん」


 リンの背後から、すらりとした長身の女子生徒が声を掛けて来た。

 彼女の名前はハルナ・アリマ、私やリンと同じアースラー教のシスターである。


「それにしてもエリス、あなた授業に出ていないでしょう? 例の転校生の移動任務中は大丈夫なの?」

「そうです。それでなにか?」

「例の少年は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫です。先生から任務終了のメールの返信が届きましたので」

「そう……ならいいや」


 ハルナは指でソーラー・グラスのブリッジをクイッと押さえる。

 ハルナと出会ったのは、中等部に進学した頃に出会い、ハルナはリンと幼馴染である。アリス星のアースラー教を信仰者だ。

 腰まで伸びたポニーテールの赤髪、眉毛は少し太く、制服は正しくしている。スクエアフレームのソーラー・グラスを掛けている。


 キーンコーンカーンコーン


「チャイムが鳴りましたわ」

「休み時間が終わりましたね」

「先生が来るぞ、早く席に戻ろう」


 私は会話をしている最中に、予冷のチャイムが鳴り響き、休み時間が終わった。早く自分の席に就こうとした。

 しかしながら居心地いごこちが悪い感じがする。なぜなら……あの女……


「なんですか? そんな目で見ないでくださいよ!」

「別に・み・て・ま・せ・ん‼」

「喋り方も変ですよ、どーエリスさん⁉」

「今何か言いましたか?」

「別に~」


 右隣の席には、長い赤毛のツインテールに、憎たらしい女子生徒が目の前にいた。そう……オオウチ君が前の学園にいたシア・ノグチだ。


「なんであなたみたいな口うるさいのがいるのよ!」

「それはコッチの台詞よ⁉ どうして私があなたと隣の席なの⁉」

「それもコッチが聞きたいですわ⁉」


 先日、シアさんが転校した初日、いきなり私と同じクラスに転入し、それで私の右隣の席だとは思えなかった。

 それからというもの、毎日シアさんと隣で口喧嘩くちげんかばかりして、教師のフクザワ先生に説教される羽目になるとは。

 なんで私だけこんな目に合わなければならないのですわ?


「フン⁉」

「フンですわ⁉」


 顔を合わせずにプイっと振り向いた。

 次に喧嘩したら先生に説教するどころで、反省文を大量に書かせるのはゴメンですわ。

 前のドアから開き、服を着た若い女教師が入って来た。

 五組の担任教師のユキナ・フクザワである。


「みなさん、おはようございます」

「「「「「「「「おはようございます」」」」」」」」


「今日は授業が始まる前に、まずは転校生を紹介します。オオウチ君……入ってきて」

「「はい?」」


 フクザワ先生がメールで送られた特別な授業とは、うちのクラスに転入してくる誰かさんの転校生だった。

 先生はドアの方へ向くと、ドアから入って来たのは……


(アレ……?)

(え……どうして……?)


 私と隣にいるシアさんは、転校生の姿を見ると、一瞬で愕然がくぜんとした。

 赤色アリス星人白色プルート星人の半分な髪型のハーフ、服装は少し乱れ、ネクタイは少し下ろしている。

 しかも背は小柄で、それに赤丸い眼鏡ソーラー・グラスを掛けている。大人しそうに見えるが、誰かさんに似ている。

 それからクラスのみなさんの口喧嘩、先生から注意した後に、自己紹介を始めた。


(まさか……)

(彼って……)

「みなさんに転校生を紹介します。オオウチ君……挨拶を」

「はい……今日からこの学園に転校してきましたヨシノ・オオウチです……よろしくお願いします」

((やっぱり‼))


 正真正銘のヨシノじゃないですか、

 どうしてヨシノが五組に転入、私と同じクラスになれるとは……

 まさか、前の学園と同じクラスメイトになれるとは、また一緒になれるとは思いも寄らなかった。

 教壇の隣にいるヨシノは、首を右と左を振り回してキョロキョロとし、

 クラスの周囲を見回している。そして……


「エ――‼‼」

「なんで―――‼‼」


 驚愕しながら立ち上がる私。

 私に気づくヨシノ、すると隣の席にいるシアさんも立ち上がった。


「私もいます!」


 -と口にしたシアさんも声を上げた。

 どうして私がヨシノさんが、私と同じクラスに転入してくるとは……










 それからと言うもの、僕の席は背後にあるエリスの隣になった。

 エリスは顔を合わせず振り向いたままで授業が終了し、フクザワ先生が退出した直後に、周囲にいたクラスメイト達が、直接僕の席に近づき、色々な事を話しかけて来た。


「ねえ、オオウチ君ってさ~、いつ適合者になった影響って……エリスのおかげでなの?」

「前の学園で起きた占領事件でしょう、ソーラー・グラスの適合に成功したの?」

「本当なの?」

「どうやって戦ったの?」

「それにオオウチ君の趣味は?」

「好きな教科は?」

「前の学園で、成績はオール満点なのは凄いね」

「好きなのは」


 クラスメイト達は転校生である僕について話しかけてくるよ。

 対話してくる生徒の口は、嵐のように耳が痛い。


「それにしても、エリスはアースラー教のシスターだろう? 一体どうやってエリスはオオウチにソーラー・グラスを渡したんだ?」

「それは……その……」

「エリスと行動した先輩に話したけど、何も教えてもらえないから、本人なら知っているんでしょう?」


 大きい眼鏡ソーラー・グラスを掛けたエルメス星人の女子生徒が、エリスについて話しかけて来た。

 ところが、僕がエリスと出会ったことを口には言えない。

 ソーラー・グラスを渡す直前、エリスが勝手に侵入する場所を探っている最中に、科学部が廃棄はいきした人間ロケット砲のおかげで、エリスは侵入した体育館の事を硬く口を閉ざしている。

 その事態を知っているのは、僕と任務中にいた生徒と隣にいるシアだけだ。極秘扱いとして生徒達には内緒にしている。


「みなさん!」

「「「「「「「「‼‼」」」」」」」」


 クラスの野次馬から飛び出て来たのはエリスだ。生徒を手で退かすように近づく。


「いいかげんにしてください。ヨシノさんに迷惑ですよ‼」


 エリスはクラスメイトに向けて、怒号を上げるように説教する。


「これからヨシノさんと一緒に学園の案内をしますので……他の部外者の人達は邪魔ですので」

「お前酷いな!」


 まさか、学園の案内するのか、こんなに広いのに大丈夫なのか。


「なんだよそれ!」

「酷いですよエリスさん」

「転校生を独り占めする気か?」

「ハヒッ⁉」


 エリスは、クラスメイトの口を放った〝独り占め〟と言った途端、いきなり雰囲気が変わった。


「それ……あの……」

「エリス?」


 エリスの顔がトマトのように赤く染まる。彼女の身体がプルプルと震え上がる。

 エリスを見たクラスメイト達は、茫然ぼうぜんとしながら視線を浴びる。


「エリスさん?」

「なんで赤くなってるの?」

「それって……」

「まさか……」


 また妙な噂を語り掛けるよ。マズイ……とんでもない誤解を免れないと、学園中に広まってしまう。


「ちょっと待ってくれよ!」

「何? 話してくれるの?」

「そんなにヨシノ君事を話したいなら……」

「「「「話したいなら?」」」」

「隣におられるシアさんに話してください!」

「⁉」


 エリス……余計な事を、指先で隣の席に座るシアに刺す。修道院のクセに酷いじゃないか。


「はい?」

「彼女はヨシノさんと同じ前の学園に通っていましたから」

「「「ええ――‼‼」」」


 クラス全員驚愕し、僕の方から突然シアの方へと話しかけてくる。


「シアさん! 転校生と同じ学園って本当!」

「あなたも転校生でしょう? それなら彼の事を知っているの?」

「教えて教えて!」


 生徒達は猛獣のようにシアに近づき始める。


「ちょっと待ってー!」

「よし! ヨシノさん、今のうちに逃げましょう!」

「シア……ごめん、後の事は頼む)


 心の底からシアに謝罪し、こんなに罪悪感になってしまうとは、とんでもない出来事を起こすのはよくない。


「さあ……早く!」


 エリスは僕の腕を掴むように、教室から逃げ出す。


「あっ⁉ 二人が逃げるよ!」

「追いかけよう!」

「待てー!」


 後から追いかけて来たクラスメイト達、逃げ続けるのであった。












 



 













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